In 理念浸透

2019年3月のハーバード・ビジネス・レビュー(以下HBR)の特集は、「PURPOSE パーパス ~会社は何のために存在するのか、あなたはなぜそこで働くのか?」です。パーパスは、存在意義として訳され、存在意義の明確化が組織を強くするというパーパス・マネジメントが注目されているのです。HBRの特集だけなく、パーパスを持たない企業は、社会に存在できず、生き残れない、そしてパーパスは社員を幸福ににし、優秀な人材を惹きつけるとまで言われ、いまやパーパスは経営戦略の注目度NO1に躍り出たかのようです。

このような傾向は、2017年に経営理念(ミッション・ビジョン・バリュー)の浸透をテーマに、会社を立ち上げた私としては、とても嬉しい特集です。このように書かせて頂くと、疑問として出てくるのが、パーパスと経営理念は、どのように違うのですか?という事だと思います。今日はパーパスと経営理念の違いについてお話させて頂きます。

パーパスと経営理念との違いは何か?

実は、PURPOSE(パーパス)というと、新しく聞こえますが、これはミッション・ビジョン・バリューからなる経営理念の中に含まれているのです。

BIOTOPE代表取締役社長兼チーフストラテジックデザイナーの佐宗邦威さんが、上記のHBR、『組織の「存在意義」をデザインする』の中で、パーパスはミッションの一つの種類として解釈できると考えているとした上で、ミッションの中には「パーパス型ミッション」「アイデンティティ型ミッション」があると、実に判り易く書かれています。

ミッションとは、理想と現状のギャップをつなげるベクトルだとすると、そのベクトルは、二つある。「自分たちは社会に何を働きかけたいのか」と外側にある終点に重心が置かれたものと、「自分たちは社会の中でどうありたいのか?」と内側に重心が置かれたものが。全社がパーパスであり、後者がアイデンティティ(identity)である。このように整理すると、ミッションの中には「パーパス型ミッション」と「アイデンティ型ミッション」があるといえる。より単純化すれば「我々は~を欲す」と社会変革を志すミッションはパーパス型、伝統産業の様に「我々は~であり続けるべし」と社会の中で文化の想像や保全を目指すミッションはアイデンティ型である。(ダイヤモンド社 ハーバード・ビジネスレビュー 2019年3月号 「PURPOSE パーパス ~会社は何のために存在するのか、あなたはなぜそこで働くのか?」より引用)

佐宗さんは、さらにパーパス型ミッションは、組織が取る行動に主眼が置かれているので「DO」のミッション、アイデンティ型ミッションは組織の状態そのものに主眼が置かれているので「BE」のミッションと言い換えが可能と書かれています。とても判り易い分類です。

経営理念の基本構造とパーパスの関係

私は経営理念の浸透や経営理念のリニューアルで、コンサルテーションやそれらのワークショップファシリテータとして、実際の組織に入って行くのを仕事にしていますが、現実の組織ですと、そもそも経営理念がミッション・ビジョン・バリューの3階層でなく、ビジョンとバリューの2階層型や、単純1文の1階層型であったりしますので、そうそう分類は簡単ではありません。伝統企業でなくても、製薬企業のように使命感を強く持っていらっしゃるとアイデンティティ型の場合もあります。

実際の現場で沢山の企業の経営理念を拝見したり、改定のお手伝いしたりする事を仕事にしている私から見ると、パーパスは、ミッションに含まれると言うよりも、いわゆる3階層の経営理念をベースに考えた場合、ミッションとビジョンの中に混在していると思います。実際現在お手伝いをさせて頂いている企業もビジョンとバリューの2階層型で、そのビジョンは、まさにパーパスとなっています。こちらの図が私の考える経営理念の基本構造です。このように実務の現場では、ビジョンと呼ばれているものがパーパスになっている事も多いのです。

良い経営理念にはDOがある

パーパスと比較した時に、どこに含まれるのか明確にできない理由は、先行研究を紐解いても、経営理念の定義や構造に明確ルールは存在しない事も、要因のひとつだと思います。しかし、ひとつ言える事は、どのような定義や構造であれ、現場で使いやすく、組織メンバーが同じ方向を向き、モチベーション高く仕事ができる「良い経営理念」であると感じるものには、ミッション、ビジョンの中に佐宗さんの書かれているように、組織の外に向かって発信するパーパスが含まれています。

私は経営理念の活用によって、組織メンバーのマインドを変え、組織の行動を変え、共に働く基準を持つ事で最終的に組織文化を変えて行くという構成で組織変革のお手伝いをさせて頂いています。そして、このようなプロセスの結果を確実に手にする為にDO型の含まれたミッション・ビジョンの方が優れていると切実に感じています。さまざまな研修内で、モチベーションを高めて頂く為に個人のビジョンと組織のビジョンに係わる事についてお考え頂いたり、この2年間で2件の経営理念の改定のお手伝いをさせて頂き、現在3件目に着手した所です。経営理念の改定にあたっては、DOを更に強固なものにする為、特に価値観(バリュー)を行動に繋げる形に書き換える事をお勧めしています。そして、目指すべき方向へ進む為の行動の仕方をトップダウンではなく、社員のみなさんと「共に働く基準を創る」という事で、改定して行くのです。共感のないところに理念浸透は進まないと考える為です。

このような経営理念の積極的な活用は、まさにこのパーパスの本来の英語の意味「目的」を持つ事で組織力と組織メンバーのモチベーションを、上げる事に他なりません。経営理念は飾りではなく、非常に重要な組織文化形成の、社員モチベーション向上のツールなのです。

 

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