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経営理念日本語化プロジェクト~共に働く基準を創る~

従業員30,00名(グローバル)、ジェネリック薬品を取り扱われている外資系製薬会社様の日本支社で、経営理念日本語化プロジェクト「共に働く基準を創る」に入らせて頂きましたので、その効果をご紹介させて頂きます。

こちらの会社の経営理念はビジョンとバリューの2階層型ですが、これまでは英語のまま使われていました。昨年ビジョンを日本語化されたとの事でしたので、今回は、4つの単語からなるバリューの日本語化を社員参加型で行い、単に経営理念の日本語化だけでなく、日本法人の飛躍の一歩の為のチームビルディングとモチベーションアップを目指しました。

プロジェクトのゴール

  1. 「ボトムアップで刷新する事で社員の方に共感生む理念を創る」
  2. 「理念策定を通じて社員のモチベーションを向上させる」

はじめに社長様に狙いをずばり伺った所、「モチベーションの向上」やる気に溢れたメンバーで共に仕事をされたいというご要望を頂きましたので、今回のサンノロジー日本語化プロジェクトは、単に経営理念の翻訳を皆でやるのではなく、その過程でお互いを知り、共に働く事の楽しさを知り、仕事に意義を見出す為のモチベーションの源を発見して頂く為の設定を目指しました。

プロジェクトの流れ

  1. バリュー日本語化ワークショップ① 5時間 ~共に働く基準を創る~
  2. 選抜チームミィーティングで言葉を集約/役員会でのプレゼン
  3. バリュー日本語化ワークショップ② 4時間 ~仕事のビジョン

第1回目のワークショップでは、自分たちの会社のあるべき姿を考え、最終的にバリューの日本語化と行動につなげる説明文を各グループで作りました。それを選抜チームでまとめ役員会で決定、第2回ワークショップでは、新しいバリューを発表して、今度は、それを達成する為に、自分がどのように行動すべきかという事で、仕事のビジョンと自分自身のバリュー作るという手法を取りました。

社員のやる気は、終了時に30%近くアップ

「モチベーション向上」についての結論を申し上げると、ワークショップ前の127.8%になりました。これは、会社への期待を10点満点で伺った結果です。

ワークショップ前の会社への期待は、10点満点で6.33平均でしたが、共に働く基準を創ろうとバリュー日本語化ワークショップに参加した時点で、7.69平均に、その後、そのバリューを自分事に落とし込むワークショップをすることで、さらに8.09平均まで上がりました。

組織人事の施策において、30%近くモチベーションを上げる手法というものを、なかなか思いつきません。

昨年同プログラムを実施させて頂いたIT企業では、140%という結果も出ています。

キャリア形成プログラム等で、そのような手ごたえを感じる事はありましたが、その場合でも、コミットしている事が、「簿記〇級」や「英語の〇〇・・・・」というような、導入担当者が「そこではない」と肩を落とすようなゴールも含まれている事が多いのです。そのような観点から、組織目標や行動方針にダイレクトにコミットする、このやり方は、組織と個人をブリッジする一手段として、おおいに活用すべきではないでしょうか?つまり、経営理念は、使い様であり、その浸透効果は、どのようなやり方を選択するかにかかっていると考えます。

どのようなゴールを目指して創るか?

最終的にどのような形の経営理念にするかは、明確に申し上げにくいところなのですが、ケースバイケースで、その企業の課題と企業カルチャーで判断するのが好結果に繋がると考えています。今回は、優秀な方の集まりですので、方向性さえあれば、自立、自律的に行動して下さるだろうという読みと、元になる経営理念の構造を鑑み、4文字の英語を日本語にすることと、それを達成する為の行動の仕方を独自の説明文で付け加えるという形で、作る事にしました。

実は、本来の英文には、ひとつの単語に5-6個の説明文がついていて、柔軟に対応できるように、なっていました。この部分を日本での浸透を促進する為に、他社の理念浸透事例や弊社のデータを元に、一刀両断にさせて頂いた事が、まず重要なポイントだったと思います。

背景課題からのワークショップの工夫

背景課題についても触れおきます。外資系の会社ですから、当たり前ですが新卒などという考え方はなく、キャリア採用のみです。そして、殆どの方が日本市場本格稼働後の2016年以降入社、この2年以内に入社されています。優秀なメンバーが終結しているすばらしい会社で、アウトプットも早く、そのクオリティもきちんと担保されていました。一方で、キャリア採用である程度の経験もお持ちのメンバーが多い為に、前の会社のやり方やカルチャーを持ち込まれる方もいらっしゃいます。殆どの方が同業他社からの転職組で2年以内という事で、まだ、「らしさ」という部分は、薄いように感じました。

第1回のワークショップでは、この個々人が持つ壁をまず壊す事から始めました。ルールは、「今日は何でも話しましょう」。壁を壊し、会社の未来を考える演習をどんどん入れて行きましたが、中でも「うちの会社の良いカルチャー」「できれば変えたいカルチャー」のディスカッションは、大いに盛り上がりました。

日本語化の過程でお互いを知る

演習をかさね、会社の目指すべきところ、変えなければ進めない部分の共通項を洗い出し、バリューの4つの単語の日本語化とその説明文をグループ毎に考えて頂きました。グループによってレベル感が変わると後でまとめるプロジェクトチームが困るので、途中2回程グループ毎の意見交換の時間を設けながら進めて行きました。4つの言葉(名詞)+行動する為の言葉(動詞)で創り上げて頂くようにお願いしました。名詞+動詞の形で判り易く、行動しやすい自分たちのバリューを作ろうという所に共鳴して頂き、楽のしみながら、かつ真剣な議論が交わされていたのが、とても印象的でした。

1回目の最後に6つのグループから発表をして頂き、各グループから1名ずつプロジェクトチームに入るメンバーを選出して頂きました。昨年の事例では、このメンバーは人事部門で最初から指名して結成してために、どのようなプロジェクトチームになるか若干の不安はありましたが、結果的に自主結成は成功で最終的に練り上げる為のミィーティングを2度に渡って行いました。

2回目ワークショップ

2回目の雰囲気は、もう第1回とは、ガラッと変わりました。最初にプロジェクトチームから、決定したバリューの発表があり、そこからワークショップに入って行きました。皆さんがグループ毎に考えた大切な言葉を集めて、4つの言葉からなるバリューの翻訳と行動する為の説明文が完成しました。

 

カルチャーを変える行動を~ハンドアウトの工夫

第2回のワークショップでは、せっかくですから、第1回でディスカッションして頂いた「良いカルチャー」、「できれば変えたいと思うカルチャー」を少々刺激が強いかと思いましたが、PPT画面にも投影し、更にハンドアウト(テキスト)に入れてしまいました。以下は、2回目のハンドアウトの写真です。

前回の皆様の楽しそうな様子の写真、みんなで作った模造紙演習の一覧、良いカルチャー、できれば変えたいカルチャーと最初の見開き4ページだけでも、このページだけでも、ぎっしり盛沢山な内容となっています。

前回の模造紙演習の成果をすべてエクセルに落として分析した結果、できれば変えたいカルチャーを、テキストに敢えて入れてしまったのは、そこから逃げずに、その状況を変える為に、この新しくできたバリューをどのように活用して、自分自身が何をすれば良いのかを考えて頂きたかった為です。グループ毎に行った演習でしたが、実は共通の部分に問題意識があることも、明白でした。2日目の鍵となる演習は、このカルチャーに関する演習となりました。

バリューを個人に落とし込む

どのように、バリューを個人に落とし込んで行ったのかについては、詳細は控えさせて頂きますが、今回新しい手法をこちらの企業の業務体質に合わせて取り入れました。そして、演習を様々入れながら、仕事のビジョンとそれを達成する為に、最終的に自分なりのバリューの説明文を作っていただきました。同じ言葉でも、人によって捉え方が変わるというような事も共有しながら、多様性の中で成果を出す為の道も合わせて探って行きました。

この個人への落とし込みは、講師の強烈な個人的事例と共に、皆様の心に刺さっていたと感じます。その為、第2回のアンケートでは、自分のビジョンについての決意を書かれた方が多かったです。会社の為にやる、やらされるのではなく、自分自身の成長の為に、自分たちが働きやすい職場を創る為に、という視点は非常に大切なポイントでした。

アンケート評価

アンケート評価は1度目よりも2度目の方が満足度、講師評価ともに高くなりました。2度目のワークショップでは、人事の方のアイデアで、出来上がった成果物であるバリューへの満足度と、それをどの程度実行したいか?という問いを投げましたが、すべて10点満点で8点以上を頂きました。このように、アンケートへの工夫をすることで、結果を見える化する事は、「よかった」「盛り上がった」と曖昧な評価になりがちがこのカテゴリーの研修の効果を実感して頂く為にも重要なポイントだと私自身も学ばせて頂きました。

1回目

  • ワークショップの満足度:   平均7.86点
  • 講師評価:                                平均7.94点

1度目のワークショップのアンケートのコメントとして、「ポジティブにみんなが会社を良くしているという事が判った」というようなコメントや、「想像以上にこのワークショップに熱心にみんなが取り組んだその姿勢に刺激された」というようなこと、「同じ英語であっても、思い浮かべる言葉や表現方法が人によって大きく違うという事が新鮮だった」、共に同じ事を考える過程で「共通する悩みや、目指す目標が見えた」。「みなでともに話合う」という事に、価値を見出して下さった方が多い印象でした。

2回目

  • ワークショップ満足度:                              平均8.09点
  • 完成した日本語バリューの満足度:             平均8.33
  • 完成した日本語バリューの実行意欲:         平均8.61
  • 講師評価:                                                 平均8.24

アンケートコメント第2回

■ワークショップで最も印象に残ったこと

  • 作成に関わることができて、理解も深まり貴重な経験ができました。
  • 今回順序立てて、Core ValuesからVisionが作成でき、解りやすかった。
  • 講師の履歴が印象に残った。(目標を定期的に振り返る必要性の話)
  • 他の人の「強み」を聞いたことで、自己の強みの表現・価値観、判断基準、言語化の参考になった。
  • 目標、Visionを持って、いつも考えることが大事であることを再認識した。
  • 色々な人とディスカッションできたこと。言いたいことを言えたこと。
  • 皆さんのVisionは普段こういうことがないと聞くことがないため、面白く興味深かった。普段おとなしい方でも内に秘めるものは熱く大きいものがあるんだと感じました。
  • 自ら考え自ら行動することを自身で決められたことは良かった。
  • 自分のビジョンを持つこと(目標を持つこと)の重要性を認識しました。
  • 会社のValueの設定に多少なりとも関与できたことが印象深いです。

■その他

  • バリューが自然に会話に出てくるくらい定着するような仕掛けをいくつか考えると良いと思いました。
  • 人間的に成長する機会をこれからも与えてもらいたい。
  • 定期的にこのようなワークショップを行う事は、皆のベクトルを揃える意味で大変重要だと思います。今後も継続して行って頂きたいと思います。
  • 定期的にバリューへの貢献度や誘導するWorkshopを開催して欲しいと思う。
  • 2回のWorkshopは、これまでの研修とは違ってとても有意義でした。一定期間後に実現具合を振り返る機会をもってはいかがと思います。

まとめと今後について

今回は、バリューの日本語化とその浸透という事で、理念浸透コンサルタントとして3カ月間のプロジェクトに入らせて頂きましたが、最後にこの成果を小さな折り畳みのカードにさせて頂きました。見開きのカードには、みなさんが力を合わせて作られたバリュー日本版が左側に、右側には、ご自身の「仕事のビジョン」とそのビジョンを達成する為の行動の仕方である、「ご自身のバリューの説明文」をお書き頂く欄があります。このカードを活用して、今後さらに定期的なワークショップを開催して頂き、浸透を促進して行く計画です。

経営理念は、「行動に繋がる作り」である事が重要です。しかし、もし皆さんの会社の経営理念が残念ながら形骸化しているとしたら、作り変えだけが、その答えではありません。部門で、チームで、個人で、その経営理念をさらにかみ砕いて「意味」を加え、行動を促す、つまりパッと見てどう行動すれば良いのかすぐに判るものに、リニューアルさせる事で経営理念を生き返らせる事が可能です。難解な覚えられない経営理念をそのまま唱和していても成果にはつながらないのです。

会社への期待が30%近くも向上し、社員の方が生き生きと仕事をし、結果として社員定着率もどんどん上がって行くのならば、「経営理念浸透プロジェクト」にトライしてみる価値は大いにあると、お考えになりませんか? あなたの部門・チームにも、こんな想いを書くカードが必要ではありませんか?(2018年7月実施)

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尚、このように長い事例を、ここまで丁寧にお読み頂いた方にとっては、「理念刷新・浸透」、「行動指針作り」、「モチベーション」、「社員定着率」などで急務の課題をお持ちの事と思います。ご予算も気になる所だと思いますので、info@pygmalion-hrd.comまで、お気軽にメールを頂ければ、お見積りをご提示させて頂きます。この分野は、私の主力研究分野ですので、今後も多くの企業様のお手伝いをさせて頂き、弊社ミッションでもある「想いをエネルギーに」、活き活きと仕事をされる方を増やしたいと考えております、ご相談もどうぞお気軽にお寄せ下さい。