In 理念浸透

2020年7月のハーバード・ビジネス・レビュー(以下HBR)のには、2本のパーパスに関する記事が掲載されています。

ノースウエスタン大学ケロッグスクール・オブ・マネジメントのサリー・ブラント教授とPwCのポール・レインワンド氏の論文「パーパスを実践する組織」、もうひとつは、ソニー会長兼社長の吉田憲一郎氏のインタビュー「カリスマ型からパーパス型のリーダーシップへ ソニーは、誰の為に、何のために存在するのか」です。本日は「パーパスを実践する組織」の解説と実際に強い組織を目指してパーパス・ビジョン・バリューの3階層で経営理念を作成した企業の事例をご紹介させて頂きます。

パーパスの定義に苦戦する企業

「パーパスを実践する組織」の記事の冒頭には、この2010年からパーパスをタイトルに含む新刊書籍は400冊を超え、記事に至っては数千件に上る書かれていますが、あくまで英語圏の話で日本はまだまだ経営理念におけるパーパスの知名度は低いように感じています。そして記事ではそれだけパーパスは経営にとってホットな話題にも係わらず、いざ作ろうとすると定義に苦戦し、まして実践するとなれば至難の業と言っています。

また、パーパスの文言でやりがちな大きな失敗を2つあげています。ひとつは、「選ばれる企業になる」「株式価値を最大化する」など、捉えどころのないパーパス、もうひとつは、「従業員の意欲をかき立て、日々、持ち味を最大限に発揮してもらう」「パワフルな楽観的思考を広める」などのような崇高ではあるが具体性に欠ける志のようなパーパスです。これらは、「会社が何のために存在しているのか」「顧客にどんな価値を提供しているのか」「その価値が自社にしか提供できないのはなぜか」と言った問には答えていないと述べられています。

そして、抜群の効果を発揮するパーパス・ステートメントは、以下の2つの目的を果たしていると明言しています。

  1. 戦略目標を余すことなく明確に描き出している
  2.  従業員の意欲をかき立てる

以上のことが明確になるだけでも、このHBRの記事を読む価値があると思います。まだ読まれていない方は、是非お読みください。

上から読んでも下から読んでも・・・・

現在弊社がコンサルに入っている企業では、当初経営理念の改定にあたり、ミッション・ビジョン・バリューを想定していましたが、最終的にパーパス・ビジョン・バリューの3階層型で経営理念を完成させました。ここからは、実際の作成事例でご紹介します。

私の経営理念に関する持論は、その浸透フェーズにおける理念への共感の重要性から、できるだけ多くの社員、できれば全員参加で作り、社員自身がやる気を生み出し行動を促すものを作り上げて下さいという事です。美しい応接室や会議室で一部の経営層が作ったものは、機能しません。そしてこれまでの弊社の調査で創り上げる過程に係わることで、社員のみなさんのやる気が上がって行くデータも確認しています。浸透フェーズでは、最終的に個人の大切に想う事と組織の大切に想う事(経営理念)をつなぐことも重要です。

どのように作るかと言うと、HBRで述べられているようにパーパスに関して言えば、作る時から前述の1と2、会社の戦略目標を明確に描き、かつ従業員の意欲をかき立てるという事を意識して作って頂いています。

前提条件として覚えやすくするために「短く」かつその会社独自の「エッジのたったもの」と繰り返しお伝えして行きます。勿論パーパス策定で大切なことは、「会社は何の為に存在しているのか」「顧客に提供する価値は何か?」という事です。

更に、そのメッセージは外(社会)に対しての明確なメッセージであると同時に、内(社内)は、個々人を奮起させるものであるのが望ましいと指導しています。まさに今回のHBRで書かれている事そのままです。昔日本橋の老舗の海苔とお茶専門店の山本山さんのCMで「上から読んでも山本山、下か読んでも山本山」というのがありましたが、まさに、これですポイントは。外から見ても、内から見ても同じ様に強いメッセージが伝わるものが理想のパーパスと私は考えます。

地図に残る仕事

理念改定の為の研修内では、良い意味でも悪い意味でもお手本になる経営理念をご紹介します。その中で、良い例のひとつとして経営理念ではないのですが大成建設さんの「地図に残る仕事」というキャッチフレーズを紹介しています。2012年に安藤寛志さんというコピーライターの方が作られたもので、広告で賞も取っています。

社会に対して私たちは地図に残る仕事をしていますというメッセージを発信しながら、内に対しても「お父さん(お母さん)は、地図に残る仕事をしているんだよ」と家族にも友人にも誇れるという所がポイントです。パーパスは、このくらいシンプルに自社の存在価値と社員もモチベーションを上げられる言葉を紡ぎ出せれば合格と私は考えています。(実際の大成建設さんの理念は、「人がいきいきとする環境を創造する」です。)

勿論、研修の策定途中では、各グループ共に視点の低さや言葉の選び方などで、私に嫌という程ダメ出しをされますが、作り上げる過程でしっかりとゴールである成果物をイメージできると、最後までぶれる事なく進む事ができます。尚、短い言葉で作り上げるだけに、ファシリテートするコンサルは、その企業の背景情報や戦略的方向性を経営陣と十分議論しておく必要があります。

現在コンサルに入っている企業では、3階層型ですが、パーパスは、このお手本のように、わずか1行のメッセージです。お手伝いしているので少々手前味噌ですが、とてもシンプルに心に響くものができました。更にパーパスが覚えやすく短い為、それを補完する具体的な到達点を示した2行30文字程で作ったビジョンが活き活きとして見えます。バリュー(行動指針)は、4つで作りました。

尚、従来のミッションとビジョンを合体させて、パーパス・バリューの2階層でも、使い易い社風に合う方を選択して頂いて良いと思います。ちょうど、同じHBRに同時に掲載されているソニーさんのパーパスが、パーパスとバリューの2階層型となっています。実際に作って見ると判りますが、見た目のカッコよさは2階層型に軍配が上がりそうですが、ビジョンも入れた3階層の方が、方向性がより具体的で明確になります。しかし、もっとも大切なことは、いつも申し上げていますが、Doを明確化する事、「どう行動するか?」というバリュー(行動指針)のある経営理念を作ることです。

良いパーパスの作り方

パーパスを作る際のポイントを整理しましょう

パーパスとは(定義)
「会社は何の為に存在しているのか」「顧客に提供する価値は何か?」という問いに答えている

弊社ピグマリオンの考えるパーパス作り方4つのポイント

  1. 短くて覚えやすい
  2. エッジのたった言葉が使われている(独自・ユニークな言葉)
  3. 外(社会)に向けてのメッセージであり、内(社内)に向けて社員を奮起させるものであること
  4. 必ずバリュー(行動指針)も同時に作ること

経営層は外からの視点が気になる

色々な企業で経営理念の策定にかかわって見ると、作り上げる社員の方は、すぐこの外からも中からもという事を理解して下さるのですが、最後の最後、社長や役員の承認段階になると、「外から見た時にこの文言だと・・・・・」であるとか、「顧客から見た時にこれだと・・・」と全力で外からの目を意識されているのが、ビシビシと伝わってきます。要はバランスです。大切なのはその社会の期待に応える為に、このステートメントで組織文化をどう変えるかという事です。

新型コロナウィルスの感染防止で大きく働き方が変わってしまった今、ますますリモートワークが増えて行くと思います。これでまでも、目の前にいないメンバーをどうマネージするか、モチベートするかという事はリーダー層の最大の課題でしたが、これから益々その状況に拍車がかかると思います。ミッションでも、パーパスでも、乱暴な言い方をしてしまえば、使う言葉は何でも結構ですが、どうぞ社員の皆さんの気持ちをひとつにする拠り所を、社員の方の共感を呼ぶ経営理念を、もし今お持ちでないならば、この機会に創り出して頂きたいと思います。

こちらのページで更に詳しい資料をダウンロードして頂けます。

以下の事例やブログでは、実際のパーパス完成披露に関する情報や、ボトムアップ型でのビジョン・バリューの作り方をご紹介しております。

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