In 導入事例, 経営理念(ビジョン)

2019年ダイヤモンド社ハーバード・ビジネスレビュー3月号の特集は、パーパス~会社は何の為に存在するの?あなたはなぜそこで働くのかです。組織の存在意義の明確化によって様々な経営インパクトが生まれて行く事に注文が集まっています。弊社は、2017年の設立以来、経営理念のリニューアルを通じて、組織の存在意義の明確化とそこで働く個人の仕事の意味の明確化によるモチベーションの向上に係わって来ました。本日は、2017年の日本サード・パーティ様の経営理念リニューアルプロジェクトの事例を改めてアップさせて頂きます。

設立30周年 社員参加型の経営理念刷新プロジェクト

日本サード・パーティ株式会社は、1987年日本に進出する海外のテクノロジー企業向けに、テクニカルサービス、ヘルプデスク、トレーニングなどの技術サービスのアウトソーシングを提供する会社として設立されました。ここ数年はクラウドコンピューティング、ロボット技術、人工知能技術などを駆使し、新しいサービスの展開を始められたところです。その日本サード・パーティの経営理念刷新プロジェクトを弊社でサポートさせて頂きました。キーワードは、ボトムアップ。社員自ら創り上げる新経営理念です。

経営理念は経営者の想い

創業理念は、すでにお持ちでしたが、具体的なゴールを示しているものの、非常に長い文章のもので、しかも事業領域を拡大して行かれるうちに、実態との乖離が生まれていました。行動指針は、一行で、中国の戦国時代の思想家、荀子の「義を先にし利を後にする者が栄える(先義而後利者栄)」です。2014年に亡くなられた先代の創業社長様(現社長のお父様)の力強い想いと決意、使命感が伝わってきます。しかし、これ一行でお客様先常駐も多い社員の方が、同じ方向を向き、熱く、ひとつになれるかと言えば難しいものがありました。あくまで経営者の方の想いであり、自ら示された経営の方向性だったからです。

そこで今回、30周年を機に新しく設定したいとのお話を頂き、すでにコーポレートスローガンとして使われていた”Connect to the Future未来の新しい技術をお客様に提供する”をミッションとし、ビジョン、バリュー(行動指針)の三層構造の経営理念に刷新する計画をたて、研修とコンサルティングを通じてサポートさせて頂く事になりました。期間は3か月です。

 

”Connect to the Future 未来の新しい技術をお客様に提供する”

森社長と担当役員の方とのご面談の後、長谷川会長をはじめ役員の方皆様とディスカッションの機会を頂きました。このあたり、なぜやるのかをマネジメント層でしっかり握るのは、大切なポイントだと思います。皆様とのディスカッションでの合意として、判りやすい経営理念を作ろう、またボトムアップで理念刷新を行い、新しい時代へ飛躍する為に、この刷新プロジェクトを通じて会社を活性化しようという方向性が決まりました。

プロジェクトのゴール

  1. 「ボトムアップで刷新する事で社員の方に共感生む理念を創る」
  2. 「理念策定を通じて参加者の方のモチベーションを向上させる」
  3. 「イノベーションを起こすビジネスの種を見つける」

プロジェクトの全体のプロセスは、以下の通りです。

理念浸透プロジェクトイベント内容日程
キックオフミィーティング 30分選抜メンバーに趣旨説明(WEB会議を活用)5月26日
ビジョン作成1日研修選抜メンバー約50名のビジョン策定ワークショップ
6月10日
プロジェクトチーム①各グループからの代表8名が、研修で各グループから出されたビジョン(案)を1つにまとめる6月15日
役員会承認プロジェクトチームのビジョン(案)を役員会に諮問、承認
バリュー作成半日研修選抜メンバー50名のバリュー策定ワークショップ7月8日
プロジェクトチーム②8グループから出されたバリュー案をまとめる7月11日
プロジェクトチーム③役員会から指摘のあった部分を再考察7月19日
プロジェクトチーム④日本語版を英語に翻訳8月8日
役員会承認バリュー決定
ミッション・ビジョン・バリューの完成
社長・担当役員面談フィードバックミィーティングと今後の展開について8月10日

社員全員で作り上げるのは理想でしたが、時間的な問題から選抜メンバー約50名で策定することとし、構成は、自由闊達にやろうという事で、役員や本部長クラスを除き現場中堅メンバー中心の構成になりました。キックオフミーティングは、森社長の決意表と講師から自己紹介をかねた概要説明をさせて頂きましたが、平日の夕方にもかかわらず30名近い方が直接参加、その他の方もWEB会議システムを使って参加されました。結果的には、このキックオフミィーティングで参加者の顔や想い、興味の対象などが理解でき、ワークショップ内容に大幅なカスタマイズを加える事が出来たことが、今回のプロジェクトの成功の大きな要因となりました。

ビジョン策定 ~1日ワークショップ~

選抜メンバー約50名が土曜日に都内ホテルに集合、1日かけてビジョンを策定しました。1日のタイムスケジュールは、以下の通りです。自分毎として落とし込む為に導入部分が「組織と自分」です。いきなり集められた皆さんにいきなりビジョンを作ってくださいと言っても、「それは経営層が考えて下さい」と思われかねません。なぜ自分発で考えるのか、明確な理由付けが必要です。

午前中の経営理念の作り方の中では、2000年以降、経営理念は社長のものから社員のものに進化しているというお話と沢山の経営理念の事例をご紹介させて頂きながら、良い経営理念の作り方のポイントをお話しました。その後、日本サード・パーティ様のお取引先の経営理念刷新の例を使って、参加者自身がコンサルタントになってグループ毎にその例題となった経営理念のどこをどう変えればさらに良くなるかのディスカッションをして頂きました。これが身近な例を使えた事で、結果的に非常に皆さん腹落ちしまして、私が言わずとも最後まで「シンプルに判りやすく作ろう」が合言葉となりました。

参加者の方は、普段はおのおのお客様先に常駐されていたり、10年ぐらい本社に戻っていませんと言うような方もいらっしゃったのですが、自分たちのことを自分たちで考えるという経験は、ものすごいエネルギーを生み出していました。特に午前中は経営理念おたくの講師に煽られていた皆さんも、午後からの「5年後のJTPは、こうなる」のディスカッションと発表の頃には、もうここで研修が終わってしまっても十分成果を掴まれたという程の集中とアウトプットのクオリティの高さでした。ワークショップのアンケート結果も、土曜日に指名されて参加されたにも関わらず満足度平均9.0、講師評価平均9.28でした。

ビジョンは、8グループからひとつづつ、合計8つの案が出され、それぞれのチームの想いが発表されました。その8案をプロジェクトチームが半日をかけて纏めて行き、経営層に諮問して承認されました。

バリュー策定 ~半日ワークショップ~

決定されたビジョンと一線化(しっかり関連付けられた)されたバリュー(判断基準・行動基準)は、当初3時間で作る予定でしたが、5時間に時間を延長しました。ビジョンは、1つですが、バリューは5つ作る予定だった為じっくりお考え頂く時間を確保する為です。今回も会社の未来を共に考える素晴らしいディスカッションの場となりました。この半日のワークショップの満足度は、前回より更にアップして平均9.22、講師表も前回よりアップしての9.28となりました。優秀な方々なので、とにかく前回の熱量を維持して頂こうと工夫をさせて頂きました。

参加メンバーへの「会社への期待」が140%

今回は、アンケートの中で「会社に対する期待」をお聞きしました。このように会社の事を共に考えるワークショップでの、モチベーションの上昇度合いを数値化したかった為です。結果として、研修前と第1回ワークショップ後(ビジョン策定後)で会社への期待は130%アップ、第2回ワークショップ後(バリュー策定後)には、140%にアップしました。アンケートの回答も、「自分達で会社を作っているような意識を持てたことは、大きな収穫でした」「自分の会社の経営理念のValueの為に考え討論し、答えを出していったことが印象に残りました」というようなコメントを多く頂きました。

このモチベーションの上昇には、正直驚きました。%ではなく、実際の10点満点評価ですと、さらにインパクトがあります。さらに生データですと、会社への期待が5点から一気に10点の方などもいらっしゃって、ボトムアップ(社員参加で下から上へ提案する)で経営理念の刷新をする意義を感じました。

尚、この140%と言う数字は、会社への期待だけでなくセミナーに感激して下さったのか、セミナー前の会社への期待もセミナー後の会社への期待も、その他の設問にすべて10点満点をつけて下さった方は、満足度の平均が下がって残念でしたが、異常値として除いています。この数字を反映させると期待値の最終数字は127.6%になります。

プロジェクトチームが「言葉」を練上げた

バリュー(行動指針)を纏めるにあたっては、プロジェクトチームが本当にがんばりました。ビジョン策定の際は、あるグループのビジョンが非常に心に響く出来栄えで、発表の際にも多くの方が感嘆の声を上げていらっしゃいましたので、すんなりと決まった(それでも半日かかりきり)印象でしたが、バリュー(価値観・行動指針)については、丁寧な言葉の選択が必要で、しかも私から「らしい」言葉をと注文を出させて頂いておりましたので、時間がかかりました。最終的には、皆様の心に響くミッション・ビジョン・バリューが完成、森社長からは、「とても自分たちだけでは、出来なかった。成功した鍵はボトムアップだった」とお褒めの言葉を頂きました。完成した経営理念は、こちらのページでご覧いただけます。

https://www.jtp.co.jp/aboutus/vision/

 

お客様情報

会社名日本サード・パーティ株式会社
所在地〒140-0001 東京都品川区北品川4-7-35 御殿山トラストタワー14階
従業員数375名
資本金
売上
資本金:795,475,000円
売上: (連結)46億34百万円(平成29年3月期実績)
URLhttp://www.jtp.co.jp/
株式東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)
事業内容◎アウトソーシング(インテグレーション・システム開発・ヘルプデスク)
◎人材育成(IT教育)・GAIT
◎ライフサイエンス(医療機器・化学分析機器サポート)
◎デジタルマーケティング(Wayin)
◎ロボティクス

このワークショップのアンケート結果などは、以下のブログ、「もっとも印象に残ったのは経営理念オタクがいたこと」でも、紹介させて頂いております。