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パーパスの浸透は、トップの講和?

経営理念としてのパーパスを作りました、さてどのように組織に浸透させましょうか?

これは、多くの企業で悩まれる所だと思います。全社会議で社長に趣旨を説明して貰おうというのが、よくある解決策です。トップから常に浸透させたいパーパスについて発信していくことは、とても大切な事で、それも一つの手段になると思いますが、それだけで本当に大丈夫でしょうか?特に弊社では、「共感」を重視している為に浸透促進の為にも社員みんなで、もしくは社員が納得するだけの人数で、みんなで作りましょうという手法をお勧めしておりますので、このトップが説明するという手法以外のものを本日はご紹介させて頂きたいと思います。

パーパスの浸透を測る指標は何か?

パーパスのような経営理念を浸透させるには、「認知的理解」「情緒的共感」「行動的関与」の3つの指標があります。

  • 認知的理解:頭では理解している、文言を暗記しているなど
  • 情緒的共感:こころからコミットしている、自分事として共感している
  • 行動的関与:メールに文言を入れたり、会議で言葉を入れたりするものの共感までには至らない

なかでも大切なのは情緒的共感です。この「共感」の大切さについては、私の論文”「理念への共感」に着目した経営理念浸透”の中で以下のデータを示させて頂いています。(論文は必要な方にPDFでお渡していますので、お問合せぺージよりご依頼下さい)

最も大切な、浸透に大きな影響を与える共感については、弊社では3つの方法で増幅させることをお勧めしております。こちらの3つです。

バリューを作らないと浸透が難しい

今回は、この2つ目の自分事化の事例ですが、その前にまず大前提として、ミッション・ビジョン・バリューの事を略して当社のミッション、パーパス・ビジョン・バリューの場合もパーパスと省略して言われる事も多いのですが、文字通りのパーパスだけの1階層型では弱いという事をまず最初にお伝えしておきます。(経営理念はその構造から1階層型、パーパス&バリューのような2階層型、パーパス・ビジョン・バリューのような3階層型があります)

パーパスは、存在意義として考えるので、大きく分類すると以下の2つのパータンとなる事が多いです。

  1. かなりの上位概念になる為、表現が抽象的になりがち
  2. 誰にでも判り易くする為に短い、1フレーズで表現される

その為に、そのままですと、自分の業務に結び付けて考えるのが難しくなります。もし本気でパーパスを浸透させようと考えるのであれば、パーパス単独での浸透では難しいので、最低でもパーパス・バリューの2階層型にする事をお勧め致します。バリューとは価値観と訳される事も多いですが、行動基準・判断基準という意味で使っています。

まだバリューがなくこれからバリューを作るという場合は、バリューを作り上げる過程でパーパスも浸透して行きますので一石二鳥です。その際のバリューの作り方については、勿論社員のみなさんで作るのが望ましく、手法については、こちらのNTTデータフロンティアさんの事例も合わせてご参照ください。

PVVの省略系で覚えやすく

今回ご紹介する日系製薬会社さんでのプロジェクトは、2020年1月のスタートからロールアウトまで1年3カ月、約400名の社員に対して30名の次世代を担う代表メンバーでパーパス・ビジョン・バリューを創り上げました。そして2021年1月から、その浸透フェーズに入りました。

浸透にあたっては、まず「パーパス・ビジョン・バリュー」という、この3つの言葉をまず覚えやすくする為に、Purpose Vision Valuesの頭文字を取ってPVVと呼ぶことにしました。これは、15年程前に係わった外資系飲料メーカーさんがMission Vision Valuesの事をMVVと呼んでいたのを思い出して私が使い始めた所、みなさんに、特に社長に偉く気に入って頂き、すべて浸透を促進するグッズやイベントの見せ方もPVVを全面に打ち出したビジュアライズ戦略を並行して進めました。速やかな浸透を目指す時に言葉の一貫性や魅せ方はとても大事だという事を私自身も学ばせて頂きました。

PVV浸透ワークショップ概要

浸透ワークショップは、3か月をかけて全社展開をする事にしました。
ワークショップは、各2時間、全25回私がファシリテーターとして入り以下の2つのテーマについて、議論とワークを行いました。営業部と一般と2つに分けてカスタマイズを行い、営業部の方はより目標にフォーカスできるように、数字達成のサポートになるような設計にしました。

つまりどういう事会議

ワークショップの前半は、PVVの理解です。「つまりどういう事会議」、略して「つまどう会議」と名付けました。後半は、自分事にする為に、このPVVを使って自分自身が成長する方法について考える時間としました。

後半は、事前にカードを作成して、左側に会社のPVV、右側に自分のPVVを書き込めるようなものにしました。このような会社主催の経営理念浸透の場合、組織の考えを個人に落とし込むという思考にどうしてもなりがちですが、組織ゴールと自分のゴールを一線化して社員のみなさんが活き活きと働いて下さったら結果として良いわけで、ワークショップは斬新と参加者にも言っていただきましたが、個人と組織のPVVをつなぐときに、矢印は組織から個人とは限らない。自分のしっかりしたゴールやありたい姿が明確であるなら、矢印は個人から組織で構わないとお伝えしました。ひとりひとりが大切という事を大前提として、後半は個人のPVVの作り方を解説して、実際に書くという事を体感して頂きました。

浸透フェーズ 354名のアンケート結果

  • 満足度 4.04
  • 私たちのPVVを理解できたか? 4.27
  • 私たちのPVVに共感できたか? 4.25
  • 私たちのPVVを実践してみようと思ったか? 4.26
  • 自分自身のPVVを完成させてみようと思ったか? 4.27

因みに4.27で「とてもそう思う」と「そう思う」の合計が90.3~90.6ぐらいですので、そう思う方が90%超えというかなり高い数字になります。全社ロールアウトともなれば、事務系の方から工場勤務の方までさまざまな方がいらっしゃいますし、批判的な方も同然いらっしゃっても不思議ではないのですが、特に共感の数字が高く出ているのは、非常に良かった点ですし、実践してみたいや、自分のPVVを完成させてみたいという数字も高くでていますので、ぜひ個人のPVVは完成させて頂きたいと思いました。

参加者のうち354名の方がアンケートにご回答頂きましたので、もしみなさんの組織でも浸透活動をされる際に、どのようなコメントが取れれば望ましいか、お考えいただきながらお読み下さい。

PVVの理解に関するコメント

なぜ、このようなPVVを策定された経緯の理解や、自分のPVV策定を通して、改めて考えることができた。

初めは理想的な格好良いPVVであるが浸透できるのか疑問に思っていたが,少なくとも自分には響くものがあった。 自分の得意とし自分のできる分野を抽出し,会社のPVVと共通項を探すことで自分なりのPVVを作ることができた。

PVVが身近に感じられるようになるワークショップでした。

今まで会社のPVVを大雑把にしか捉えていなかったが、グループの方達とディスカッションを行うことで整理がつき、より理解することができました。

多様性を活かしたグループワークについてのコメント

自分なりの答えを考える時間があったのも良かったが、同じ職場の方々の考えを聞くことができて良かった。いろんな考え方や表現があるものだと思いました。

グループワークにて、同じ様な内容を表現するにも、自分とは異なった表現を聞くことができ大変新鮮で参考になった。

今まで会社のPVVを大雑把にしか捉えていなかったが、グループの方達とディスカッションを行うことで整理がつき、より理解することができました。

グループワークで意見交換した際に、他のMRの皆さんは既にしっかりとしたビジョンを持っていた。自分にしかできない仕事は何なのかを考える良い機会となった。

ワークショップの手法についてのコメント

会社で設定しているPVVに無理に合わせるのではなく、自分のPVVとの共通項を模索していく手法は、受け入れやすいと思いました

自分自身のPVVを考えて会社のPVVに寄せていくという手法は大変勉強になった。

PVVを自分の言葉で置き換える事で、抽象的なイメージから、具体的な軸を築けました。ブレずに活動を行うためには、必須の事だったと思い、良い機会をいただけましたので、大変ありがたかったです。

会社のPVVが発表されたときには一方的に聞くだけで、ピンとこない感じでしたが、自分のPVVに当てはめると言われ、初めて会社PVVと真剣に向き合いました。

Our→Myへの展開は非常に重要で腹落ちしました。

出来上がったPVVを見ただけでは多くの人が時間をかけて作ったことが漠然としか理解できなかったが、個人のワークショップを行うことでPVV作成に費やした苦労の一端を自分事として体感し、より共感することが出来た。

自身のPVVに落とし込むことによってより明確な活動指針となり理解度が増すと感じました。

自分事化についてのコメント

会社のPVVに合わせた自分のPVVを作ることができた。

改めてPVVを理解でき、自身のPVVを考える事により、より近くに感じられるようになりました。 有難うございました。

個人のバリューの作り方が勉強になりました。

自分について掘り下げて、無理やりPVVと繋げるのでなく、繋がっている点を見つけることができたので良かった。

皆さん真剣に自分のワークに取り組み、積極的に語っていたことが印象的でした。このようなワークの場をPVVだけでなくもっと設けていけば、どんどん自分事になるという意見も得られました。

文字に書き出してみて、自分はこんな風に思っていたんだと 発見することができたワークショップだった。

参加していたメンバーのコメントから、会社の方針として出てきたPVVを「自分事」に落とし込んで、自分のPVVを考える事が出来ていた。PVVがある事で、部門を越えて全従業員が同じ視座で仕事が出来る様になると感じました。

PVVを個人レベルまで落とし込む大切さが印象に残りました

個人のPVVを作成するにあたり、自分の得意な事・目指すべきところが明確になり参考になりました。ありがとうございます。

会社のPVVを個人レベルまで落とし込む大切な時間でした。一人一人、自分と向き合ういい機会になったと考えます。

講師評価に関するコメント

柏さんの相変わらずのバイタリティー溢れる雰囲気がとても印象的でした。講義の内容も明快でわかり易く、個人のPVV完成が自身の成長に繋がっていくと感じました。

思っていることを言葉で表現できない場面でも 柏さんがうまく汲み取ってくださって、 自分の考えをまとめることができました。

個人的に思ったことで、ポイントになると思われることを講師の方が、取り上げ解説をいただいたことは、大変わかりやすかったです。

柏さんがセンスのある方で、先ずこの人にコンサルを依頼したことは正解であったのではないかと思います。また、日々の通常業務に追われている中、自分を見つめなおすいい機会になりました。

講師の柏先生が、固くなりすぎない適度にフレンドリーな雰囲気で講義をされていたことで、本音のトークがされていたと感じました。押しつけがましい感じではなく、全体としてよい雰囲気だったと思います。

良い意味で、あまり大勢でWeb会議をやっている感覚がなく、とてもすっきりとした進行で感動しました。

全社ロールアウトを終えて~総括~

私の印象に残ったコメントは、「マニアックな話こそためになった。」というものです。この分野はもともと自分自身の研究分野であるために、とにかくオタク全開の展開になり、時として、ものすごくマニアックな話になるので、事前にその旨お断りしてから解説をする事もしばしばですが、このコメントで救われたというか、オタクでも良いのだと励みになりました。

また、今回個人への落とし込みのパートに関しては、組織特性に合わせてすべて演習などをゼロから、さらにコロナ禍を鑑みすべてオンラインワークショップという形で創り上げました。その結果は、アンケートコメントの通り、自分事として考える為の大きなサポートとなっています。特徴としては、組織と自分の考えを最終的に一本の線に載せるイメージでありながら、会社から自分の矢印ではなく、自分からに寄せていく、自分→会社でも構わないという構成にした事だと思います。結局、会社中心より自分のよりどころである自分のPVVを、自分の成長の為に作る事が、このような激しい環境変化の中でレジリエンス力高く生き抜く為には、必要であると私自身考えています。

その結果として個々人が活性化していけば、組織としてのWinも達成できます。

このようなワークショップを通じて、会社の為にやるのではなく、組織と共に成長する、縁あってかかわったこの組織の中で成長しようと思われる方がひとりでも増える事が「想いをエネルギーに生きる人を育てる」をミッションに掲げている私の願いです。

弊社株式会社ピグマリオンでは、お客様の課題に合わせて経営理念の策定や浸透をお手伝いさせて頂いております。パーパス・ビジョン・バリューのみならず、他にも沢山の事例をご紹介できますので、経営理念刷新やチームビジョン策定などの課題がございましたらお気軽にご相談下さい。ご相談はこちらから。

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