In 事例 ソリューション MR研修 掲載, 営業(MR職), 導入事例

先生のインサイトを引き出せないのは何故か?

インサイト収集はもはやMSLだけの仕事ではありません。医療現場の最前線のMRも先生と共に患者さまの事を考えて行くためにも(私は価値共創と言っていますが)、先生からインサイトを引き出し、より質の高いDTLを目指さなければなりません。

そもそもインサイトとはなんでしょうか?直訳すれば洞察です。しかし、マーケティング用語としてのインサイトは、「人を行動にかりたてる隠れた心理」のように使われます。つまり、本質だったり、本音だったり、大切な判断基準であったりということです。

医療の世界では、「患者インサイト」という使い方もあります。患者さんが心の奥底で考えている本音で、その本音部分で医療に関する意思決定をしています。ドクターに関しては、単純な「本音」で片付けられない医学的、科学的な視点からのまだ顕在化していない、心の奥底から出てくるアイデアや気付きも、インサイトです。

このようなものをまとめて、現場では「先生のインサイトを引き出して」という指示が出ています。しかし、なかなか会えない、しかも面談時間が短いという厳しい環境の中でMRが簡単に先生のインサイトを探って来れるような状況ではありません。

私は、その先生のインサイトを先生の価値観という言葉を使って説明しています。なぜなら「先生のインサイトはなんですか?」と聞いたら駄目な結果しか待っていないからです。価値観とは、たとえば先生の理想、先生の判断基準、先生の最優先事項です。そのような大切な事を判断の軸にされているから、先生は迅速にYes、Noの判断ができるという事をいつも研修内でお伝えしています。このような対話をきっかけにして、更に深い話込みになると先生も気づかれていなかった事などを引き出すことが出来ます。つまり、いきなり「インサイト」ではなく、インサイトを引き出すには実践的な順序があるという事を示すことが重要です。

慌ただし現場で先生の深層心理にアプローチしてインサイトを引き出さなくては!と焦るより、今日は「この疾患における先生の理想の治療法を伺おう」という高尚な質問から「先生の薬剤選択の基準」という具体的なお話まで、先生に伺うのは価値観(理想・判断基準・最優先事項)と覚えておくだけで、とっさに対応できるからです。なぜ、この先生はこの製剤に対して前向きでないのだろう?そのように不思議に思った時には、先生の価値観が判っていないという事になります。

インサイトを探れ!

前置きが長くなりました。本日の事例は、外資系製薬会社さんの特定領域の約MR100名の方。先生のインサイトを深掘りしていくスキルにフォーカスした研修です。キックオフに合わせた短い時間での研修でしたので、多くの事はお伝えできないかも知れないという事を責任者の方に最初にお伝えしましたが、それならという事で内容を絞って、「マインドチェンジ」と「対話で先生のインサイトを引き出す」という2点に絞って設計しました。

2時間研修の構成
・2度目のアポはなぜ取れないのか?
・価値共創型MRとは何か?
・先生のインサイト(本音)を引き出す「聴く力」

今日の事例のテーマである先生のインサイトを引き出す上でもっとも大切な事は、以下の3つのステップです。完全に無駄を削ぎ落としたインサイトを探る究極の3ステップ、簡単ですので誰にでもできます。

  • ステップ1    準備/戦略的な共感を学ぶ
  • ステップ2 関係性の構築/短時間で話を弾ませる方法を学ぶ
  • ステップ3 掘下げ/効果的な掘下げ質問を学ぶ

この3つのステップが流れるように進まないと、短い時間で先生のインサイトを引き出す事はできません。掘下げが甘いままなんとなくお付き合いしていても、以前のように毎日会えるわけではないので、処方拡大にも処方推進にもつながらないばかりか、先生の記憶にも残りません。毎日会えるわけでないからと、インサイトやニーズも掴めないまま提案しても、それは当たるのか当たらないのか判らないバクチのようなもので、私のようなコンサル業の場合は、それなら提案しない方がましという話です。

また、難しいのが先生に拒否された場合や、関心のない先生へのアプローチです。この件は、死ぬほど同じ質問を頂きます。私からすると、なぜ一度拒否反応を示されたぐらいで、塩を振られた青菜のように「しおしお」になってしまうのか謎です。ちょっと嫌がれているかもと感じだけでも即撤収している様子のMRの方も研修では見受けられます。先生の価値観(理想・判断基準・最優先事項)を掘下げないで帰ってくるのは勿体ないと思いますが、いかがでしょうか?

たとえば禁忌を聞かれて禁忌を丁寧に説明したとしても、それは御用聞き営業、酒屋のサブちゃんと一緒です。もっと会話を掘下げよう、先生のインサイトを探っていこうと身構えていれば、禁忌を聞かれただけでも、そこから先生の価値観を流れるように聞いてこれるはずなのです。

と言っても頭でしか理解できなさそうなので、研修では毎回実演しています。デパートの調理器具売り場でスライサーとか包丁を実演で販売しているのはよく見る光景ですが、あれと同じ「実演」です。流れるような動きでキャベツの千切りや人参の千切りをするのを見ていると、この包丁欲しいかもと思うあれです。業界外の講師が「流れるようなトークで禁忌を聞かれたところから、先生の疾患の治療方針を聞き出す実演をしている、これなら私にもできるかも・・・・」という感じです。

研修の話をしているときりがないので、この辺にしておきますが、ぜひこの3つのステップと、価値観(理想・判断基準・最優先事項)というのを、頭に叩き込んで先生と対峙されてみて下さい。そこから、きっと深い話につながっていきます。

領域特化研修から全体研修へ

さて、結果的にこの短い研修は大変なご満足を頂き、終了後その場で領域のトップの方から「全体研修でやりたい」との素敵なお申出を頂きました。現在追加で、2時間2回コースで再設計中、実施は2023年3月と4月です。副読本として拙著「突破せよ!新時代を生き抜くMRの掟」(医薬経済社)もご購入いただき、これなら、がっちり学んで頂けます。

因みに、2022年にこのような研修をたくさんやらせて頂いて感じるのは、やはり1回コースでは勿体ないという事です。最低2時間を2回、3回まで頂くとアポ取りの秘訣まで研修に入れられます。2週間間隔で3回、もしくは2週間間隔で2回、その後1ヶ月ほど実践して頂いて3回目というのが現時点でのベストルート、さらに言えばご人数はWeb Meetingのアプリがクラッシュしなければ200人でも300人でも構わないのですが、領域別に分けて受講して頂くと、やり取りや事例が全部特定製剤や特定の診療科のものに出来るので更に効果的と考えています。エリア別に実施されているところもあり、地域特性や課題を加味した設計にして、他のエリアと切磋琢磨して頂いています。そして、ぜひご商談の際には、まずどのような製品をどのように世の中に広めて行かれたいのかを教えて頂れば幸いです。

2023年2月14日

MR研修の事例などは、こちらのサイトにまとめてあります。
MR研修のプロセスなどは、こちらの資料公開ダウンロードサイトで公開中です。

最新の事例は以下のものです。

その日のうちに新規採用決定も/MRクロージング力の強化・SOVからの脱却~日系製薬会社

30日間で医療施設の新規アポイントが驚きの485件!!MRアポ取りの達人研修 日系製薬会社