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パーパスをリモートワーカーのエンジンに
~社員モチベーションは競争力の源泉だ~

パーパス経営に注目が集まっています。先日はNHKの朝のニュース、「おはよう日本」で特集が組まれ、昨日2021年11月29日の日経新聞1面トップが「御社の存在意義何ですか?」となりました。パーパス経営、パーパス・ブランディングなど、パーパスの効果が注目されているのです。パーパスとは、存在意義と訳されますが、これまでの経営理念の仲間(ウェイやクレド、ミッション・ビジョン・バリューなど)に加わって新しく登場し、いまもっとも注目を集めているのです。

今日は、そのように脚光を浴びているパーパスですが、実は使い方、また刷新される場合の目的は様々です。日経新聞を読まれた社長に「よし、うちも経営理念をパーパスに作り変えよう」と言われてネットで情報収取をはじめられた担当役員の方、経営企画室や人事の方、ちょっと待ってください。何をゴールに作るのかによって、作り方も変わってきます。

経営理念をパーパスに刷新する理由~内向きパーパス・外向きパーパス~

旧来の経営理念から新しくパーパス(組織の存在意義)として作り直す為の理由は、大きく外向きと内向きに分かれます。外に向けて、うちの会社はこうです、環境に配慮し、SDGs経営を目指し、社会に向けてこのような貢献をしますというのが、外向きのパーパスです。

内向きのパーパスの策定目的は、端的に言い切れば「社員のモチベーションを上げること」です。私がこれまで、お引き受けした企業は、すべてこの目的一択となっています。「エンゲージメント向上」という言い方をすることもあります。その為に、良質な企業文化の醸成し、多様なメンバーと働きながら成果を出すために社員間の共通言語を創出しいくことなどが求められます。

社員モチベーションを競争力の源泉に

はじめて外資系製薬会社さんと、この経営理念を作る仕事をした時、まだ未熟ものであった私は、プロジェクトの大きなゴールは、「売上向上」や「企業価値向上」と言われると予想していました。ところが、訪問先の製薬会社の社長が、目的は「社員のモチベーションを上げること」と断言された時、他にも効果効能が沢山あるのに、モチベーション一択とは!と、ちょっと驚いた事を覚えています。いまから5年前のことです。

しかし、現在の私は、パーパスを社員モチベーション向上の為に使うのが、組織も社員もWin-Winであると考えています。具体的には、個人のパーパスと組織のパーパスの共通項を見出して、お互い同じ想いを持つことです。パーパスを持つことで、社員もこれまで以上に活き活きと仕事が出来、組織から見るとパーパスで良質な企業文化を作り、活き活きと働く社員で生産性が向上し、良い人材が定着する事で、企業競争力の源泉になる為です。これについて詳しく研究されたい場合は、別のコラム(経営理念とサービス・プロフィト・チェーン)で社員満足度と経営理念の関係について書いていますので、そちらも是非御覧ください。

パーパスをリモートワーカーのエンジンに

もし、今このコラムをお読みの方が、これから自社の経営理念を改定されたいと考えておられるならば、ぜひパーパス型で、社員の皆さんの共に作り上げることをお勧めします。(存在意義をベースに作るのであれば、呼称はどのようなものでも構いません。)これからの時代、多様性を活かして社員の方にそれぞれ主体的に働いて貰うという意味でも重要なのですが、もうひとつ、この2年で大きく変わった環境変化によって、パーパス型をお勧めする理由があるためです。それは、リモートワーカーの増加です。

2020年からはじまった、進化型コロナウィルスの感染拡大、いわゆるコロナ禍によって、ホワイトカラーの働き方は、ものすごい勢いで変化しました。リモートワーカーの急増です。
業種によっては、もうすでに2年間殆ど出社していないというところもあるでしょう。私の息子は、IT企業のSEという職種ですが、2年間で3回程度しか出社していないようです。私のようなコンサルタントも同じくで、座ったままで、オンライン研修を行い、移動もせずにオンラインで商談をしています。

世の中のマネージャー職、課長職の現在の悩みは、もはやフル・リモート体制で管理することも監視することもできなくなったチームメンバーをどのような掌握し、成果を出して行くのかという事ではないでしょうか?会議をしながら、画面をオンにしないこの人、もしかしたら、手元のスマホでゲームをしているかも知れない・・・・・そんなことが心配になってしまう方も多いのでは?そのひとつの解決策が「ここに到達したい」という同じ想いを持って仕事をすることです。

旧来の経営理念とパーパス型の経営理念の比較を図で示すとこのようになります。

2000年前後を境にそれまでの経営者の意思表示のような経営理念から変化しているとは言え、まだまだ多いこれまでの経営理念に多い形、先頭車両だけがエンジンを搭載している組織牽引型。そして、これからの経営理念の理想は、パーパス型です。パーパス型になると、それぞれにエンジンが搭載されて自由に動くことができます。リモートワーカーには、パーパス型エンジンの方が適していると思いませんか?

コロナ禍で入社の人は組織に馴染めるのか?

同じような課題ですが、コロナ禍でリモートが進んだ企業では、メンバー間の関係性も不安が残るでしょう。コロナ禍後に途中入社した社員の人は、他のメンバーと上手くやっていけるのでしょうか?既存のチームメンバーの風通しを良くするチーム・ビルディングも課題でしょう。

昭和の昔だと、これを解決するために、社員旅行や全社ボーリング大会などもありました。仕事を離れたところで、お互い交流することで親睦が深まると考えられたのです。しかし、
ワークライフバランスなどという言葉が流行り、仕事もプライベートも大事にしようという事で、就業時間外の交流はめっきり減りました。ワークワイフバランスの原則は、仕事とプライベートの分離だからです。蛇足ですが、このワークライフバランスの仕事とプライベートとの分離という考え方もリモートワーカーにとっては、ますます仕事とプライベートがボーダレスになっている為に、近いうちに死語になっているかも知れません。

さて、このコロナ禍でのチーム・ビルディング問題を解決するために、当初流行ったのがZoom飲み会と言われるような、オンラインでのチーム飲み会です。お互いを知る為のゲームをしながら、お酒を飲んだり、何かを食べたりして親睦を図る方法が流行りました。しかし、今、これを続けているところは殆どないのではないでしょうか?最初こそ、物珍しさもありましたが、そうそうに飽きられてしまいました。何より2年前と今ではオンライン会議の本数が桁違いに増えて、仕事以外では、健康のために少しでも画面から離れたいというのが本音かも知れません。

では、どのようにメンバー間の関係を良好にして、成果を出して行けば良いのでしょうか?その答えのひとつが、パーパスという共通の想いを持って仕事をすること、パーパスでつながるという事なのではないでしょうか?

経営層だけの問題だけではなく、多様なメンバーの個性を活かして、チームをまとめるのに苦戦をされているマネージャー層のみなさんにも、一度是非チームのパーパスづくりに取り組んで頂きたいと思います。

なぜこれまでのものではダメなのか?

ここで、疑問がでてきませんか?これまでの形の経営理念でもしっかり周知していれば、リモートワーカーも、ゴールを明確に認識しているはずだろうと。ところが、大切なポイントとして、人は共感をしていないと行動しないという問題があるのです。簡単に言ってしまうと、「想いをエネルギーに行動する」ことが、最も大切です。これについては、「経営理念浸透における共感の重要性」というコラムを書いていますので、そちらを御覧ください。

また、共感を生み出す為には、いくつか手法があるのですが、もっとも有効なことは、共に作ることです。これに関しては、以前「日経トップリーダー」に寄稿した記事のまとめ「日経トップリーダー_「経営理念をアップデートせよ」掲載」で詳しく書いていますので、ぜひそちらもご覧頂ければと思います。

想いをエネルギーに生きる人を育てる

弊社のパーパスは、「想いをエネルギーに生きる人を育てる」です。大きな組織のパーパス・ビジョン・バリューの全社員による改定や、部門単位のパーパス・ビジョンの策定、またチーム運営を円滑にするための、パーパスに連動させたチームビジョン&ゴール策定などさまざまな事例があります。ご興味のある方は、ぜひホームページお問い合わせ欄よりお声がけ下さい。

(2021年11月30日)

経営理念とパーパスの違いとは?~HBRより

日経トップリーダー_「経営理念をアップデートせよ」掲載

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