In 理念浸透

本日は、経営理念に関して、お勧めの書籍をご紹介します。

帝塚山大学 経営学部経営学科 教授の田中雅子さんが中央経済社から出版されている以下の「経営理念浸透のメカニズム」という書籍です。アカデミック(学術的)アプローチの書籍ですが、田中教授は非常に強い想い入れをもって経営理念浸透について研究されておられ、理念浸透に関しては、おそらく日本で一番多く論文を発表されておられるのではないでしょうか?

経営理念浸透のメカニズム

この書籍では、それまで論文でまとめられていた先行研究の整理からはじまり、それまでの先行研究でまとめられてきた「経営理念の機能・効果」のモデル図などを、わかりやすく再構築されて説明されています。また経営理念の文言によって「企業内統合型」「社会適応型」「両機能網羅型」の3つに分類される等、体系的に知識を整理して学べます。経営理念は、それぞれの企業が多様なものを作っていますので、このようなアカデミックアプローチでの整理は困難を極めますが、そのあたり果敢にチャレンジされておられるのが流石です。

私が、最初に田中教授の論文に触れたのは、「理念の浸透方法と浸透度の定量的分析 ~定着化と内面化」という 田中雅子教授と甲南大学経営学科の北居明教授の論文でした。理念浸透に関して、それまでの研究ではその定義から統一されておらず、人事の世界では有名な神戸大学の金井壽宏教授の研究陣が「腑に落ちる」と表現した個人が体験を通じて理念の意味に気づく事を理念浸透と言う場合と、マネジメント・人事制度や扱い製品にまでも理念が反映してい場合を浸透と呼ぶことがあったわけですが、この論文の中で、田中教授は、明確に理念浸透は内面化(個人が腑に落ちる)と定着化(マネジメント・制度的な定着)のふたつに分けて考える事を仮説モデルとして提唱されました。そして、その内面化と定着化が浸透効果として「職務満足」と「組織コミットメント」につながるとしています。

ちなみに私は、これを個人への浸透、組織への浸透と捉えました。

  • 個人への浸透  個人が理念を、理解し、共感し、行動へとつなげて行く状態
  • 組織への浸透  組織が理念を咀嚼し戦略的、制度的、人事マネジメント的に活用されている状態

このようにアカデミックアプローチも、実務の現場に置き換えて考えてみますと、また別の側面を補足する必要があることに気づきます。私は論文を書き上げる際に、この個人の浸透に着目し、WEBのアンケートを使って約200人のデータを取り、浸透度合いを分析しました。しかし、その土台となる考え方は、田中教授の書籍と論文に大きな影響を受けています。

田中教授の研究は、ほかにも文言に着目した視点など非常に示唆に富んでいます。しかし、この書籍の中でも大きくページを割かれていますが、研究されている企業が堀場製作所とローランドの2社のみ、かつ調査の方法がヒアリングなのが、惜しまれるのです。

ローランド企業スローガン

– 創造の喜びを世界にひろめよう
– BIGGESTよりBESTになろう
– 共感を呼ぶ企業にしよう

堀場製作所 社是 「おもしろおかしく」

田中教授の長年の研究への取り組みと深い示唆をもってすれば、もっと他の業種や異なる形態の「行動指針」のついた三階層型の経営理念についても調査して頂きたかった所です。とは言え、この書籍の学術的価値は、損なわれるものではなく、体系的に経営理念を整理されたい経営者の方、人事担当者の方は是非手に取られる事をお勧め致します。

経営理念に関して、さらに実業直結の具体的な情報をお探しの方は、以下のブログも是非ご一読下さい。

・経営理念刷新研修の様子「最も印象に残ったのは経営理念オタクがいたこと」

・新入社員向け経営理念浸透ワークショップの様子「理念浸透研修事例 新入社員の目標設定」

・株式会社DTS 経営理念理念浸透ワークショップ事例

私の明治大学専門職大学院での研究成果である論文「経営理念の浸透レベルの違いが組織成員に与える影響について ‐「理念への共感」に着目した経営理念浸透‐」にご興味のある方は、PDFで差し上げておりますので、info@pygmalion-hrd.comまでご連絡下さい。

◆経営理念浸透に関する弊社イベントのご案内

経営理念活用で社員定着率をあげませんか?私共ピグマリオンがお客様と共に考える参加型イベント、次回は以下の予定です。

「経営理念活用で上げる社員定着率」~モチベーション高く仕事ができる組織創り~

2017年10月11日(水)14:00~16:30 アーバンネット神田カンファレンスにて開催 入場無料

お申込み、詳細はこちらから

 

 

引用論文:田中雅子 北居明 ”理念の浸透方法と浸透度の定量的分析 定着化と内面化”, 『経営教育研究』, 12(2),49-58, 2009.