In 導入事例

日本生命保険相互会社様で、女性管理職候補生向け「入社1年次研修」90分を実施させて頂きました。対象者の方々は、まもなく入社2年目になる皆様約40名です。それぞれの皆様の仕事は、入社2年間は営業職、割り当てられている企業を日々訪問され、その企業の従業員の方からご契約を頂く事が仕事となります。

研修の狙いと構成

責任者の方からは、1年目で100回ぐらい折れますので「ただ一言」やる気を出させて下さいと言われていました。やる気の扉は内開きとなっており、外からは開かない為、ここは考えどころでした。営業という仕事は、売れたら楽しい、売れないと辛いという単純構造になっておりますので、営業を楽しくする「売る為のヒント」をお伝えするという作りの90分にしました。その中で、最終的に皆さんが「よし、また頑張ろう」と思って頂けたら、研修は成功です。社内トレーナーの方もいらっしゃり、しっかりとした基礎トレーニングを日々積まれておられる方々への研修ですので、社内で実施されていることなどをトレーナーの方と連絡を取りながら確認させて頂き、社内トレーニングと今回の研修と相乗効果を出して頂けるように慎重に設計しました。

研修構成は以下の通りです。

  • 売れる営業とは?(継続して売る為の6つのヒント)
  • 聴くの秘密(傾聴)
  • 成績を安定させる秘密(自分の行動管理と仕事のビジョン)

 

参加された皆様は、とにかく育ちの良い、お嬢様という雰囲気の感じの良い方ばかりです。私なら、どの方に話しかけられても、嬉しくなりそうです。まだ22歳~23歳ですので、営業職だからといっても、全くガツガツしていらっしゃいません。しかし、人によっては、決められた会社に毎日訪問して行くと半年もたたないうちに、あの席とこの席とこの席のお客様は苦手というような、地図も出来上がってしまい、ご面談の為の訪問が苦痛になる事もあるようです。そのような素敵な皆様を前にして、もう娘を見守る母のような気持ちでスタートしました。絶対、営業って楽しいんだ!という実感を、感じて頂きたいと思いました。

会話に慣れる事で成果から遠のく

今回の研修演習の中で私自身気づかされた事があります。あまりにも優等生的に、あまりにも決められた営業スクリプト(営業トーク)を勉強して来た為、それを逸脱せずにお客様に接していると、お客様との会話に深みがないと言いますか、心からのやり取りが出来なくなってしまう事もあるという事です。会話に慣れる事が売上に直結するかと言うとそうではなく、逆に遠のいてしまう事もあるようです。

今回受講された皆様は、そろそろ営業活動も1年になる為に、お客様との会話自体には、慣れてそつなく対応できるようになっているのですが、その時のお客様の様子を必死で観察して、お客様の言ったことを受け止めたり、お客様の気持ちをおもんばかったりという事に対する意識が希薄になりがちなようなのです。お客様との接触回数を増やしながら、お客様と言葉のキャッチボールをしながら、お客様との関係性を深めて行きたいのですが、対話が綺麗過ぎて、すぐに終了してしまうのです。たとえばこのような感じです。

お客様のお返事に対して、お客様の今、感じている事を一旦受け止めて、お客様の気持ちを言い換えてお伝えする演習です。上手くできるとお客様に自分の話をきちんと聞いて貰えたという感覚を感じて頂けます。

  • お客様役の私「出張が多くて、もうへとへとなんです」
  • 受講者「それは、お疲れですね、今日はゆっくりお休みになって下さい」

悪くないのですが、それをすぐにさっと返されると、そうですよね、わかりましたで会話終了なのです。とても素敵な方、お仕事もテキパキとされておられるご様子の方2名を指名すると、2名とも同じような切り返しで、ドキッと致しました。アドバイスが欲しいのではなくて、「相当お疲れのようですね」でも、「もう、ゆっくり1日お休みになりたいと、お感じになられているのではないですか?」でも、なんでもよいのですが、一度受け止めて頂きたいのです。アドバイスというのは、このような時はゆっくり休んだ方が良いというは、これまでの経験からの受け手の意見なわけですから。

毒舌講師ですので、すぐに「外部講師なのではっきり言いますよ、みなさんへんな癖ついていますよ(笑)」と申上げて、心地よい対話を創り上げる為には、まずは、いったん相手の気持ちを受け止めるという事について再確認させて頂きました。素晴らしいのは、流石、日本NO1の保険会社に入社した皆さん。理解力も高く、3人目に指名させて頂いた方は、見事に私の気持ちをしっかり受け止めて下さいました。

さらに社内トレーナーの方が男前で(女性でいらっしゃいますが)、この件に関して「課題が見えました」とキッパリ言い切られていた事です。私が想定外の皆様の回答にアタフタとアドリブを入れているのを冷静にご覧になっておられたのだと思います。本来は、研修時間内で完結すべきですが、「お客様とのやり取り」に関しては、社内トレーニングでの、補完をお願いさせて頂きました。

勿論、今回ごく一部の方とのやり取りだけですので、すべての方がその傾向がある訳ではありません。しかしながら、これは、最近の若手の課題として「言われた事は、本当にきちんとやる(でも言われていない事ができない)」という人事部で良く聞く課題を想起される事例に近い状態でもあります。優秀なのに、勿体ないと言われている現象です。本当にこれが昨今の若手に限ったものなのかは、疑問ではありますが。自分も若い頃は、そうだったけれども、経済が右肩上がりで先輩も上司も忙しく、ほっておかれたので仕方なくやっていたような・・・・・ただ、言える事はトライ&エラーの繰り返しが幾らでもできる、有り余る現場でのチャンスが今はない事も事実です。そのような中で新人を育成し、定着率を上げてという、育成担当の人事部門の方は、かつてない状況に直面しているのです。

セールスで成果を上げる13の秘訣

久しぶりでしたが、講師の柏がスランプの時に作った「セールスで成果を上げる13の徳目(秘訣)」も一部ではありますが、ご紹介させて頂きました。こればかりは、人の考えた売れる方法をそのままやっても売れないので、ご自身で考え抜いて、編み出して頂く他ないのですが、みなさん私のご紹介させて頂いた例を参考に、研修時間内に2つ、ご自身のこれに集中すれば、集中し続ければ売れるという行動を書き出して下さいました。皆様の書き込みを拝見していますと、具体的な再ターゲットの手法や訪問方法なども書かれていて売れない、お客様とコンタクトできないと落ち込む前に「もっとすること、出来る事はある」という実感をお持ち頂いたようです。

仕事におけるビジョンは、小さな一歩から

弊社の研修で「やる気」と言えば必ず登場するのが、折れない自分を作る為に仕事におけるビジョンを持つこと、それは可能であれば経営理念や会社のビジョンを関連するものである事というパートです。

人生順風満帆な時ばかりではありません。そんな時に、自分がしっかりとした想い(志/こころざし)を持って仕事をしている人といない人では、結果に差が出てきます。また組織の目指すところと自分自身のビジョンが重なる部分があった方が、その組織で成功する確率、成長する可能性がぐっと上がります。

 

今回も仕事におけるビジョンのお話をさせて頂いたのですが、参加者のグループをグループ共有の時間に回りながら、本音も、ちらほらと伺う事ができました。ある方がこんな風におっしゃっていました。「仕事でビジョンなんて考えたこともありませんでした。なんとなく入って、入れたらなんとかなると思っている人が殆どだと思います」兎に角どこかに入れればという事で就活を頑張ったら、たまたま誰もが名前を知る大手保険会社に入社できました。だから、ビジョンなんてとんでもないと言った所です。この正直な告白をして下さった方には、よく言って下さいましたという感謝の気持ちでいっぱいです。

これは、別に日本生命保険様に限った課題ではなく、訪問させて頂いている別の企業様でも同じような状況です。つい先日も新入社員研修の打合せIT系企業様の人事の方のお話を伺いましたが、まさにこの課題、企業側も好況で採用環境が厳しくなって学生を確保しづらくなった為に、採用基準も緩みがち、最近は、学生も殆ど企業研究もせずに入社してくる人も多いとの事だそうです。そのような場合、帰属意識も薄い為に、仕事へのコミットメントも低くなるだけでなく、早期退職者として会社を去る場合もあるとのこと。そのような常日頃の人事サイドの課題を、現場で目の当りにしたことで、新入社員研修では、理念教育を入れるべきという持論がますます強固なものになったと同時に、「考えたこともなかった、これでいいのだろうか?」というまさにベビーステップ、小さな一歩ですが、今回の研修では、しっかりこのパートを入れておいて良かったと思いました。

正直、短い時間でビジョンの大切を実感!という所まで腹落ちして頂いたかは、判りませんでした。しかし、最後の何故ビジョンが必要かという事例で、「タラバガニの下敷」になってキャリアが崩壊した時のお話をしたところで、ようやく「ちょっと目的を持つって大事かも」「大事なんじゃない?」ぐらいは、感じて頂けているという手ごたえを感じました。これだけ皆さんに集中してお聞き頂けるエピソードになるとは、カニの下敷きになった時には思いもよらない事でしたが・・・・どのパートが皆さんの心に響いたのかをアンケートコメントの一部からご紹介させて頂きます。

アンケートコメント ビジョンに関すること

  • 「自分のビジョンと会社・組織のビジョンが結びついていたから、スランプを乗り越えられた」という言葉が印象に残った。自分の現状を見つめなおしたいと思った。
  • 揺るがない目標や目的意識を自分の中に持つことの大切さを学びました。挫けそうになっても、それまで自分がやってきたことが自身を救ってくれると、講師の方のお話を以て学ばせていただきました。
  • 会社のビジョンと自分の仕事におけるビジョンを一直線におくことが、今後どれだけつらいことがあってもやめずに頑張ろうと思える秘訣だということが分かったので、まずは自分のビジョンをしっかり定めるところから始めたい。

アンケートコメント 営業手法に関すること

ズバッと指摘させて頂いた部分を皆様なりに、きちんと受け止めて下さったようです。

  • 傾聴についての講義はとても印象に残りました。自分が今まで無意識に相手の状態を受け止めるのではなく、アドバイスをしていたなと感じました。昨日まで気付かなかったので、今回の講義をとても有意義でした。
  • ヒアリングの研修は、自身が普段ものすごく発信中心であるということを実感できて非常に勉強になった。
  • ワークでもあったように、私たちは普段の会話の中で受け止めるのではなく「アドバイス」をしてしまいがちということを実感したので、普段から気をつけていこうと思いました。
  • 聴く力にあたって、具体的にどういったやり方をすれば伸ばしていけばいいのか分かったので良かったです。

アンケートコメント やってみたいこと

スランプに陥った時に「これを愚直にやれば脱出できる」という行動を洗い出し、私の場合ですと13個にまとめて、週に2個ずつ実践していた「セールスで成果を上げる13の徳目(秘訣)」が皆様に響いたようです。他にも、生コメントの引用は控えさせて頂きますが、お客様に心地よくお過ごし頂く為のご自身の行動に関する決意を赤裸々に具体的に、ご表明頂きました。

  • 小さな目標、成績が思うように行かず苦しいときもこだわって維持できる目標を立てる。
  • オウムとカエル、13の徳目
  • 自分の中で一週間これだけはやる!という目標を決めて行動していきたいと思いました。
  • 徳目を作ること。なにかやるべきこと、目標をどんなに小さなことでもいいから立てて、意識して行動することしたい。
  • 毎週これだけは拘るというポイントを考えること。また、働く上でのビジョンをもって活動するということも取り入れていきたいです。
  • スランプに入った時こそ、基礎に立ち返り、同じことを着実に毎日続けていく取り組みをしていきたいと思いました。
  • スランプで成績を安定させるコツということで、「集中できる行動を決めておく」ということについて、実践したいと思いました。

以上のように、90分間の研修ではありましたが、非常に密度の濃い時間を受講者の方々と過ごす事ができました。素直であるという事は、人として素晴らしい事とその昔、船井総研の船井幸雄さんが講演でお話されておられましたが、まさに、まだまだ大きな成長の「伸びしろ」を感させる素直でまっすぐな皆様との楽しい研修でした。

(2018年3月実施)