In 理念浸透

良い経営理念・行動指針の作り方

本日は、経営理念の作り方です。前回のブログ「経営理念は変えて良いのか?」で呪文のように長い判りにくく、覚えにくい経営理念は、2つの理由を持って変えた方が良いというお話をさせて頂きました。

今回は、では良い経営理念とはどのようなものか?という事についてお話致します。研修の中では、良い経営理念のチェックポイントとして8つあげていますが、ここでは、その中でも特に大切な点について、お伝えします。

良い経営理念のポイント

1.シンプルで覚えやすい
2.社員の共感を呼ぶものであること
3.理念の主体が、経営者ではなく社員「みんなのもの」であること

なぜシンプルで覚えやすい必要があるかと言えば、一人ひとりの社員がエンジンのように搭載して、どこにいても同じ理想・同じ判断基準、同じ優先順位で行動できるようにする為です。覚えることもできないのに、行動はできません。なぜ共感を呼ぶ言葉にこだわるかと言えば、理念を浸透させるときに、それこそ最大のポイントになる為です。主体は、あくまで行動を実際にする社員でなくてはなりません。それでは、シンプルな経営理念のサンプルを幾つかご覧ください。

大同特殊鋼の経営理念は、とてもシンプルです。これなら覚えられますね。またこの英語版が秀逸です。カッコつけることなく、使いやすさを優先している感が満載です。「高い志を持つ」の英語は、なんだと思いますか?”Achieving”というような英語をカッコよく使ったり、わざわざKOKOEOZASHIとローマ字表記にすることもできたでしょうが、なんと”AIM High”です。なんと奇をてらう事のない、判りさすさでしょうか?私は、この英訳を見たときに感動すら覚えました。たとえば、こんな場面を想像しました。英語ネイティブでないアジア地区などの工場の現場で、工場長が現地スタッフに言うのです。「”AIM High”だよ、”AIM High”」これは、まさに使いやすさ優先の英訳です。因みに、チームの力を活かすは、”Team Strengths”です。シンプルで、日本語っぽい英語で、判り易いですね。

楽天ブランドコンセプトは、かなり尖った感じでカッコよく、でも具体的ですね。詳しくは楽天ホームページでご確認下さい。尚、シンプルでも、命令口調のような文言であったり、上から目線のものは、絶対にとは言いませんが、浸透が難しくなります。社員の方が共感しにくいからです。企業によっては、創業者からの薫陶や家訓のような形で継承されている場合もあり、やむを得ない事もあると思いますが、作り直すなら、わざわざ「〇〇しているか?」というような、命令口調にすることは、避けた方が賢明です。

 

理念の浸透の指標

理念の浸透は、以下の3つで測ることが可能です。

  1. で理解している     「理解」
  2. で感じている         「共感」
  3. 身体(行動)で示せている 「行動」

この3つのうち、理念を浸透させ活用して結果を出そうという時に、共感がなにより重要なファクターとなります。毎日唱和をして頭で理解していても、共感していなければ、心に作用しない為、モチベーションも上がらず、チームビルディングにも影響せず、理念の使い道が限定的になるからです。理念への共感は、浸透にも影響しますが、従業員満足にも影響を及ぼします。

データ的な根拠や共感の呼びおこし方については、今後のブログで追ってご紹介致しますが、数値的な根拠をお急ぎの方は、私の論文「経営理念の浸透レベルの違いが組織成員に与える影響について~理念への共感に着目した経営理念浸透」をお送りしますので、お申しつけ下さい。

経営理念は、どのような形態でも良く、特に決まりはありませんが、実は行動につながるバリュー(行動指針)が大切です。経営理念とビジョンだけの2階層型、または、コーポレートスローガンのように1階層型の所は、ぜひ行動につながる行動指針を策定することをお勧め致します。話を判り易くするために、ここでは3階層型の経営理念でご説明いたします。

お勧めは、1行・3行・5個

お勧めは、経営理念ミッション・経営方針ビジョン・行動指針バリューを1行・3行・5個です。以下がサンプルになります。

経営理念の場合は、3層ですが、もしチームビジョンを作る場合は、ビジョンとバリュー行動指針の2層型でかまいません。如何ですか?聖域だとか、アンタッチャブルだとか言わずに、多様な人を束ねて仕事に意義を感じてモチベーション高く働いて貰うために、理念刷新にチャレンジされませんか?

 

※経営理念と言った場合、ミッション使命・ビジョン・バリュー(行動指針)をすべて含有しているものとして定義しています。詳しくは、「経営理念とは何か?」をご一読下さい。

 

参考文献 「経営理念の浸透 アイデンティティプロセスからの実証分析」高尾義明 王英燕 有斐閣