短時間で一気に!パーパス浸透を加速させる全社500人ワークショップ 製薬企業
パーパスの浸透は、どのように進めたら良いでしょうか?
これまで何度もお客様から頂いた質問です。
私がコンサルとして策定からサポートしている場合、比較的展開の目途は立つのですが、すでに完成しているパーパスを浸透させたいというご要望が多いことも事実です。
このような場合、そもそも存在するパーパスの文言が響くものなのか、響きそうもないものなのか。バリューはあるのか、ないのか。そのバリューは高圧的な雰囲気を醸し出す命令形になっていないかなど、実は様々な要因に強く影響を受けてしまいます。しかも、時間をかけずにできるだけ効果的に浸透を促進させたいと考えた場合、どのような方法があるのでしょうか。
今回ご紹介するのは、形は講演でありながら、実は社員全員参加型のワークショップとして実施し、一度に全社員の共感を生み出した製薬会社さんの事例です。

ご縁を感じていた仕事、しかし突然の骨折
2026年は、お正月の初登山で左足首を骨折。1月5日に緊急入院、翌日手術という不穏なスタートとなりました。
その中で、もっとも心配だったのが、すでにお受けしていた製薬会社さんのパーパス・フィロソフィ浸透の500人講演でした。(こちらの会社ではバリューを「フィロソフィ」と呼んでいます)
当初この日程には、同じ系列ホテルでの別の500人講演が入っていましたが、その講演が延期になったことで、同じホテル名で同じ人数という奇跡のような再会を感じていました。また私はパーパスの専門家でもありますが、仕事の半分は製薬会社さんのMR研修です。今回の「パーパス × 製薬業界」は、私の強みの掛け算になると大いに燃えていた仕事でした。
どうしてもやりたい。でも歩けない。
ここでありがたかったのは、会場を走れない私を許容してくださり、キャンセルせずにそのまま実施してくださったことです。あとからよく考えれば、この規模の講演で会場を走り回り、お客様の声を拾いまくる講師は私くらいかもしれません。変わった講師が普通の講師になった、くらいの感覚だったのかもしれません。
それでも足の化膿やぶり返しも心配でしたので、万が一の場合には完全に代打ができる方を確保。当日はマイクランナーとして会場を走っていただきました。今世紀最高金額の高額マイクランナー。おかげで、いつものワークショップを再現することができました。
結果的に、90分間のパーパス・フィロソフィワークショップは大成功。手ごたえも大きく、終了後のアンケートでも、この日のコンテンツがいくつかあるうちの「印象に残ったトピック」の第1位を獲得することができました。
背景理解とプロセスの整理
成功の要因はなんでしょうか。まずは背景理解とプロセスの整理です。
現在サポートを継続している企業でも、それぞれの事業ドメインの説明を受けたり、各地の工場を見学させていただいたりしていますが、まず会社の背景を理解させていただくことは、外部講師として基本中の基本です。
今回は製薬会社さんでしたので、目指すゴールとそれを達成するための環境を理解し、いつものMR研修と同じように製品ごとの勉強も行いました。ワークショップ内のコメントで具体的な内容に言及する場合でも対応できるように準備しました。何より、この会社の存在意義やその製品が患者さんにとって非常に意義のあるものであったことが、成功を確信できる大きな要因となりました。
もうひとつ難しかったのが、パーパスだけでなく、ビジョンや中期計画、スローガン、戦略ゴール、フィロソフィ、ナラティブなど、大変失礼ながら言葉が乱立しているように見えたことです。
それぞれは納得感の高いものですが、すべてを紹介することも、ましてすべて覚えることも難しい。そこで、どのように絞って定義づけし整理するかに時間をかけました。最終的には以下の三階層に整理しました。
- パーパス
- ビジョン(日本の戦略的ゴール)
- フィロソフィ(バリュー・私たちの行動指針)
また残念ながら、実際の行動につなげるためのバリューであるフィロソフィは、世界共通で作られている英語を日本語に翻訳する際に、もともと想定していた意味より少し言葉が一般化されているように感じました。本来行動につなげるには、動詞で終わるような文言が望ましいのですが、今回は、その部分もできれば改善した方が、良いと感じました。そこで、本社が打ち出している英語の説明文を読みながら、行動につながるフレーズへと弊社で作り変えました。
もちろん勝手に作り変えるのは失礼ですので、英語併記のうえ、日本語は仮訳という形にしました。しかし幸いにも気に入っていただき、そのままワークショップで採用されることになりました。まだ日本側でウェブサイトなどにフィロソフィを打ち出していない段階であったこと、そして責任者の方が懐深く私のアイデアを受け入れてくださったことが幸いでした。
日本語でも同じですが、バリューが「誠実」「信頼」「グローバルカンパニー」といった名詞や単語で終わってしまうと、行動につなげる際にイメージがしづらくなります。
また、それぞれの社員が自分で考え行動につなげていくためには、心を震わせるワードチョイスをすること、そしてある程度「のりしろ」があり、解釈の幅を持つ言葉を選ぶことも大切です。
大規模な人数で共感を生むコツ
その人数では「講師が一方的に話す講演になるのでは?」という疑問もごもっともです。しかし実際には講演ではありません。

90分の中で以下のようなワークを行いました。
- グループワーク 3回
- ペアワーク 2回
- 個人ワーク 2回
講義の時間は、冒頭7分とクロージング4分のみです。グループワークでは、拙著『パーパス浸透の教科書』でもご紹介している、パーパスとバリューの「つまどう会議」を実施しました。
「つまどう会議」とは私の造語で、「つまりどういうこと会議」。この言葉はつまりどういう意味なのかをディスカッションする場です。今回は短い時間で行動につなげ成果をつかむことを目的としていたため、バリューの「つまどう会議」はいつもよりもDO(行動)を意識した内容にしました。
具体的な行動をイメージしていただくため、また参加者のレベル感をそろえるために、責任者の方と相談し、それぞれのフィロソフィ(バリュー)に対してサンプルのDOも作成しました。
製薬会社さん向けの書籍「突破せよ!」のビジョンの章でも書いていますが、一例をあげると、たとえばん患者さんを大切にされている製薬会社では、「患者さん中心」「Patient Centric」「Patient Centricity」といったバリューを掲げることが多いですが、それを自分の言葉で落とし込めないと、競合他社一斉に横並びとなります。その場合のDOの例は以下のようになります。
患者さん中心
いつも「先生の患者さんは、私の患者さん」という想いをもって仕事に向き合う
ちなみに、これは私が考えた言葉ではありません。以前、血漿分画製剤をプロモーションされているある製薬会社のMRの方が言われた言葉です。今回は製薬会社さんでしたので、このようなエピソードも紹介しました。
MRとして、なぜ、どのような想いで仕事をするのかを定義して先生と向き合うことはとても大切です。そこからそのMRの説得力が生まれます。だから、会社に言われて自分のフィロソフィの行動を考えるのではなく、あなたが担いでいる意義ある製品をより多くの患者さんに届けるために、このワークが必要なのですと、少し暑苦しいMR研修のような話も、ここでさせていただきました。

エンゲージメントを高める
今回、事前に社長様とも面談させていただきました。
求める結果は、世の中を変える製薬会社になるという強いメッセージを共有し、社員のエンゲージメントを高めたい。この会社で働くことを誇りに思ってもらいたい、ということでした。
今回90分という短い時間ではありましたが、パーパス・バリューという共通言語をきっかけに、部門を超えたディスカッションと意見共有が行われ、その結果、皆さんの心に火を灯すことができたのではないかと思います。今後の継続としては、年に一度このような機会を設けるのか、アンバサダーを各部門に立てて展開していくのか、さまざまな方法が考えられるでしょう。
パーパス浸透とは、結局のところ「つまりどういうこと?」を問い続けることなのだと思います。
言葉を理解し、自分の仕事に引き寄せ、行動に変える。
そのプロセスを社員同士で共有したとき、パーパスは初めて組織の中で生き始めます。今回のワークショップは、その最初の火種をつくる90分、ここからひとりひとりが仕事を通じして紡ぎだす物語を楽しみにしています。

その他の事例(お問い合わせ下さい)
大人数でワークショップ形式という導入事例は他社様でも行っております。本文中にもあるように、現在どのようなパーパス・バリューをお持ちなのかによって展開は変わりますが、一気にパーパスを浸透させたいという際には有効な手法です。
同じく500名での2時間の展開事例
50人単位になるとより密なワークショップ展開が可能、こちらはホームページでもご紹介頂いていますがNOKさんの事例となります。
オンラインで一気にも可能です。こちらは4000人の展開事例