完成したパーパス・バリューをどのように浸透させて行けば良いのか?今回の事例は、新入社員研修でのパーパス・バリュー浸透ワークショップの展開です。
企業は、人材確保に必死です。「辞めてもすぐ次が探せる」、辞めるには退職代行に頼めばストレスもないとばかりに、新卒の社員定着率は下がる一方です。厚生労働省の調査によれば30%以上の人は3年以内にいなくなるとのこと。(2023年の調査:3年以内定着率は大卒67.7%、高卒で63%)
そもそもパーパスを作り変える、浸透させる目的の中に世の中に対しての価値を明確化し存在意義をあきらかにするというものがあります。企業価値の向上はお客様から選ばれることにもつながり、売上の向上も期待できますが、弊社での依頼の殆どはパーパスで社員のエンゲージメントを向上させたい、モチベーションをアップさせたいなど、外(社会・お客様など)に対して作用するパーパスの使い方と言うよりは、内(社員)に向けた活用の比重が高くなっています。
新入社員研修事例(製造業)
製造業のお客様において、入社して2日目の新入社員約100名に3時間半のワークショップのパーパス・バリューワークショップを実施しました。当初責任者の方から大変満足と満足をあわせて98%ですということで、お褒めの言葉を頂いたのですが、なんと、よく見ると大変満足の数字が・・・・5段階評価の81%です。おそらくもう匿名の研修アンケートにおいて、この記録は破れないのではないかと思います。

研修アンケートで、大変満足はなかなかつけにくいものです。通常弊社の研修のアンケート満足度の目標は大変満足の50%超えなのですが、なかなかクリアすることはできません。また、匿名アンケートで80%超えは、正直みたことがありません。参加者は院生から専門学校まで幅広く、理系中心でクールな方々が多いと事前に言われていたのですが、どのような点が新入社員に響いたのでしょうか?また、このように半日で社員エンゲージメントを一気にあげることができるのであれば、それを他の階層の方にも応用できるのではないでしょうか?
パーパス・バリューワークショップの構成
ワークショップのゴールは、パーパス・バリューが「わかる・使える」ようになることです。それによって、ひとりひとりが組織の大切な人になることができます。
構成は、「つまどう会議」(つまりどういうこと会議の弊社造語)から、自分の行動目標に落とし込む流れです。
- パーパス・バリューとは何か?
- どのように作れたのか?(会社の歴史を踏まえて)
- つまどう会議 Purpose(存在意義とは何か?)
- 仕事の意義とは何か?
- つまどう会議 Values(共通言語を共に考える)
- 仕事を通じてなりたい姿
- 行動目標を作成する
最初にパーパスとは何か、どのような想いで作られたのかを共有しました。そこから、自分たちなりにパーパスを咀嚼して意味づけをしていくグループワークを展開します。パーパスで6人グループ、15分。バリューで6人グループ20分です。
アウトプットに差が出ないように、会社の先輩方が同じようにワークショップを行い考えた成果物としての模造紙をサンプルとしていくつか紹介したあとに始めました。発表は、全グループではなく、パーパスとバリューとあわせて全グループが発表する機会を設けました。
ここで、大切なことは、発表を発表のまま終わらせずに、使われた言葉を拾ってファシリテーター(進行役)である講師が、意味付けを深めていくことです。
「〇〇という言葉は、最高相談役の〇〇さんが良く言われていた○○○にも通じますね。」
「ここで発表されたのは、新しい製品ですね、〇〇の技術は素晴らしものがありますよね。」「こんな未来は、今、御社のXXのこのように、実際の会社の中でパーパス・バリューを活かして、浮き上がらせて見せるのも、ファシリテーターの仕事です。最後に国内事業場で展開した時の発表時の模造紙を画面で共有しました。いつくか、心に響くものがあるのですが、中でも素晴らしいのが、パーパスを世の中に対してのメッセージと捉えず、社内のメンバーの成長のための言葉として捉えた模造紙です。このような素晴らしい成果物は、デジタル保存をして、ぜひ機会をみて共有していきたいものだと思います。
つまどう会議については、拙著「パーパス浸透の教科書」にワークショップ運営方法が詳しく書かれていますので、ぜひお読み下さい。
仕事を通じてなりたい姿
仕事を通じてなりたい姿については、いきなりは書けないのでウォームアップの質問が必須です。今回は王道の強みを活かすというようなアプローチでなりたい姿を導くのではなく、もっと平易な形のなりたい姿を提示しました。言葉を言い換えれば仕事のビジョンですが、仕事の志という言い方にしました。「こうなりたい」という姿や志を持っていると、スランプの時に強いというお話もさせて頂きました。
このスランプになった時の脱出の方法を会社に入って最初に聞けて良かったというコメントが、アンケートでもいくつか見受けられました。なるほど、そういうことが大切なのかと、あとから気づきました。ウォームアップの質問をいくつかなげて、他の人とも意見交換(カンニングタイム)をしながら、自分自身のなりたい姿と組織のパーパスを関連付けていきました。最終的にバリューに関連付けた、やってみようと思ったことを書き上げ、グループ内で共有しました。

アンケートから見えてくるもの
アンケートのみなさんのコメントからは、パーパス・バリューが、理解できたという学びに対するコメントも多かったのですが、組織の中での目標の立て方や、モチベーション維持の方法を学んだことも大きかったというような感想も沢山頂きました。面白いなと思ったのが、言葉選びの大切さです。
いつもは目標を立てる時、へびがリンゴを丸呑みするような目標を立てても、話が大きすぎて達成できない、たとえば今週の目標を「子供との時間を作る」にすると、翌週もまた同じ目標になって、いつまで経っても達成できませんが、「遊戯王ゲームを30分する」という目標にしたら、すぐに達成できましたという話をするのですが、今回は、同じ例を出しましたが、ヘビがリンゴを丸呑みではなく、デジタルネイティブ世代ですので「目標の解像度を上げる」という言い方をしてみました。これが、結構響いていて驚きました。
正直に言うと新入社員研修は自分の年齢が結構上なことから、苦手意識がありましたが、このような結果を見てしまうと、自分に与えられた使命のようなものを感じました。そして、アプローチは新入社員でなくても、有効だと思いました。入社して一番最初にする研修は、マナー研修も大事ですがまずは「マインド・セット」。組織の仲間として向かい入れるために、みなさんの会社でも組織のゴールと社員のゴールを、一本の線の上に乗せる研修をやってみませんか?