In 社長の追伸

Official髭男dismという人気のグループをご存知でしょうか?2019年10月にメジャーデビュー1Stアルバム「Traveler」がいきなりオリコン週間アルバムランキングで1位になり、昨年は紅白にも出ていた大人気グループです。略して髭男と呼ばれています。因みに、こう書いた場合は、ヒゲダンと読みます、ゲゲゲの鬼太郎の鼠男を彷彿とさせる「ひげおとこ」ではありません。因みに紅白見るまで私も判っていなかったのですが、ルネッサーンスというお笑い芸人の二人組でもありません。今日は彼らの大ヒット曲から見る、若手の心理について考えてみます。

私は「伝える力」研修の中でいつもボイストレーニングの方法のひとつとして、ボイストレーニング用に適した歌をご紹介し、1曲、2曲実際に研修内でボイストレーニング風に1-2フレーズ歌ってみます。いつもは、中島みゆきの「空と君のあいだに」とスピッツの「チェリー」という曲で、ちょっと年齢高めの時は、サービスで天地真理の「恋する夏の日」を歌います。今回の営業研修は相当若手という事で、新しい曲でもと物色中に、Official髭男dismに行き着きました。

研修用に選んだのは、PretenderというコンフィデンスマンJPという映画の主題歌にもなり大ヒットした歌です。とても素敵なメロディーと韻を踏んだフレーズが心地よく響く曲です。何度も繰り返して聴き、歌詞を覚えたはずなのに、なぜか歌ってみると字余りになる不思議な曲で、また聴いては歌ってみるという事を繰りかえしましたが、結局喉を締め付けてしまうような高音と激しい転調で、自分基準では結構上手く歌えるようになりましたが、ボイストレーニングには向かないという判断をして研修で歌うのは諦めました。

しかし、問題はその歌詞です。

もっと違う設定で もっと違う関係で 出会える世界線 選べたらよかった
もっと違う性格で もっと違う価値観で 愛を伝えられたらいいな そう願っても無駄だから

グッバイ

ちょっと待った~!!!!

やってみないで、やる前から諦めちゃうの?伝えて見ればいいじゃん!!!!なんで無駄って決めつけちゃうの!!!!願っても無駄ってどういう事?????

君の運命の人は僕じゃない 辛いけど否めない でも離れがたいのさ
その髪に触れただけで 痛いや いやでも 甘いや いやいや グッバイ
それじゃ僕にとって君は何?答えはわからないわかりたくもないのさ
たったひとつ確かなことがあるとするのならば「君は綺麗だ」

え~ちょっと待って、聞いてもいないのに「わかりたくもない」ってどういう事?しかも「僕にとって君は何?」って、それ自問自答じゃない?僕にとって君は何ではなく、ここは「君にとって僕は何?」って本人に直接聞いてみればいいのに、なんでやる前から諦めちゃうかな・・・・・と全く価値観の違う別世界に呆然です。特にこの「僕に取って君は何?」のフレーズは理解不能で何度も聞きなおしました。

この歌は、Pretender(ふりをする・詐称者)という歌で、何か彼が言っても「感情のないアイムソーリ」というやる気のなさそうな「ごめんなさい」が返って来るらしく、もうこれは終わりなんだなと悟っているのです。そして彼女と別れるなんてなんでもないよと強がり、なんでもないふりをしながらも、実は激しく未練がある様子を歌った歌です。映画書下ろしで詐欺師の話ですので、Pretenderというチョイスは秀逸、その歌詞に文句をつけている訳ではありません。問題はこの歌が大ヒットするほど、この歌に共感する人がいるという事実です。歌っている彼らの年齢そのまま、比較的若者中心にです。

もし、このように何かやる前から、挑戦して見る前から諦める営業マン・営業ウーマンが自分の部下だったらどうでしょうか?

行ってもいないのに、「あそこはダメです」、言ってもいないのに、「たぶん無理だと思います」って言う人達です。部下との対話などと言う研修をやっていますが、こういうのが続くと心の中では切れますね、完全に。なぜそう思うのか、必死で聴きだそうとするかも知れません、「やってみてから言って!このヘタレがっ!」って思ってしまうかもしれません。

そしてもっと恐ろしい歌詞が・・・・

誰かが偉そうに 語る恋愛の論理
何ひとつとしてピンとこなくて
飛行機の窓から見下ろした 知らない街の夜景みたいだ

とっても素敵な歌詞ですが、これを現実に置き換えて、こちらが熱くなって、熱心に「これはどう?」「あれをやってみたら?」と口説いても、飛行機の窓から見下ろした、知らない街の夜景みたいだなぁなんて思われていたとしたら、考えただけで、もう寒気がします。先週の営業研修アンケート取っていないのですが、大丈夫だったんでしょうか?

因みに他の曲も調査の結果、愛を失ったのは自分の行動のせいと反省している歌とか、今も「飛び込む時をそっと待っている」という、私の価値観からすると、ごちゃごちゃ考える前にいいから飛び込め!!!(怒)という歌詞もあるようです。

息子が就職活動で、挑戦する前から「あそこは、これこれこういう理由で俺には向かないと思う」とか散々言っていた事を思い出し、どうやら確実にこういう人は世の中にいて、もしかしたら昔より増えているのかも知れないと思い至りました。

それは良い点に目を向けると、行動する前に「良く考える人」であり、「慎重な人」であり、「分析する力が高い人」だと思います。ここで、もしかすると昔から沢山いたのに、私だけが、気が付いていなかっただけ?と思い愕然としました。そういえば息子の就職の時、全然動き方が足りない、そして、あまりにも価値観が違い過ぎるとこぼす私に、友人が勧めた本は、「静かな人が世界を変える 内向型人間のすごい力」(スーザン・ケイン 講談社プラスα文庫)でした。そして、せっかく勧められて買ったその本を迂闊にも読み終わっていないという・・・・・反対側から人を見る機会を自ら放棄しているとしか思えません。

私の仕事のひとつに組織のモチベーションを上げる仕事があります。そしてそれは、非常にニーズが高い仕事でもあります。その対象者には当然若手も含まれます。むしろ経営層から見た「何を考えているのか判らない若手」の組織エンゲージメントを高める鍵を見つけ出し、「突然の退職」等の不慮の事故を防ぐのがメインの場合もあります。

ここの所、若手の研修も増えてちょっと自信をつけかけていたのですが、この曲から学んだ、反対側から見た世界を忘れないようにして、「知らない街の夜景」のような研修だったと言われないように精進しようと思いました。

因みに髭男で一番好きな曲は、今ハマっているドラマ佐藤健の「恋は続くよ どこまでも」の主題歌「I LOVE」です。もう最高のタイミングでこの曲が流れます。因みにこのドラマ自体に意味はありません、佐藤健が、ただただカッコいいだけです。佐藤健ってこんなにカッコよかったんだと再認識してドキドキするドラマとなっております。