水産業界にいたころ、鳥取県の境港というベニズワイガニが水揚げされる日本海に面した小さな漁港に良く行っていました。今は、ゲゲゲの鬼太郎の著者の水木しげるさんのご出身の街として「鬼太郎ロード」でも有名になっていますね。当時、一度出張に出ると中々帰ってこない営業ウーマンだった私は、境港に仕事に行くと、そこから、米子、松江など地域のお客様を一回りして帰ってくるのを常としていました。
中でも印象的なのは、松江です。夜も8:00を過ぎると真っ暗になってしまい、どこで食事したらいいのか判らなくてパニックになってしまう松江は、宍道湖という大きな湖に面した街です。宍道湖は、しじみ漁で有名ですが、水は汽水なのです。汽水は、「きすい」と読みます。海水と淡水が混じっている事を言います。塩分濃度で言うと3%未満です。
河口付近というのは、どこでも当然汽水域になるのですが、あれほど大きな湖が汽水というのが凄いですね。そして汽水にしか生息しない魚もいるわけです。ここで感動してしまうのが、私の変な所です。2017年3月末まで2年間、仕事の傍ら夜間と週末は専門性を高める為に大学院で勉強をしていましたが、バリバリ専門の人事領域以外で私が果敢にチャレンジしていたのが、マーケティングです。
勉強をしてみて面白いなぁと思ったのが、人事領域と交差する部分が沢山でてくるのですが、
その関係論文には、人事系の論文がさっぱり出てこなかったり、人事の実務の世界で当たり前の事が、発見されたように記述されていたり、または、あきらかに今の人事領域では、これはないと反論したい事があったり。(だからと言って真剣に反論するとアカデミックな話を超えて喧嘩になりますが。)
一方で、人事系で散々勉強してきたのに、マーケティングで登場する人事的な要素は、初めての事も多く、しかもフレームで綺麗に考え方を分類することができ、この両方を一緒に研究したら、もっと色々な知見がでるのではと感じました。この2つの領域の混ざっている部分、これをバウンダリー(境界)領域と言います。
バウンダリー領域には、組わせると面白いものが沢山転がっていますが、通常お互いの専門領域に塔を建てる事に忙しく、その領域に敢えて足を踏み入れようとする人は少ないようです。
会社員生活でもよくある話ですね。「それは、俺の範疇じゃない」というやつです。バウンダリー領域だから、こその面白さがあるのに、勿体ない。
一緒にいるだけで、相手の領域に踏み込まなかったら、なんの為のダイバーシティ(多様性)推進だか、判りません。すみません、話がそれました。
物事を解決する時や事業戦略を立てる時に、枠組みで考える事を、フレームワークで考えると言います。「人・モノ・金」というフレーム(枠組み)は聞いた事があるとおもいます。マーケティングという学問は特にフレームが多く、有名なフレームワークが幾つもあります。3C分析(お客様・競合・自社)や SWOT(スオット)分析などは、有名なフレームです。
マーケティングの戦略を立てる際に有名なフレームと言えば、リチャード・クルウェットやエドモンド・ジェローム・マッカーシーという学者が創り出したマーケティングの4Pでしょう。1960年頃の話です。私も30代は、会社の販売戦略を立てる時に生意気に使ったりしていました。2000年頃、フィリップ・コトラーが3つ追加し、7Pになりました。大変恥ずかしい話ですが、私は3つ増えて7になってから15年以上それを知らなかった事になります。
- 製品(Product) 商品・サービスの特徴等
- 価格(Price) 販売価格・設定価格
- 場所(Place) 流通経路
- プロモーション(Promotion) 商品・サービス販売促進活動
- 人・参加者(People またはParticipants) 従業員や関係者、利害関係者
- プロセス(業務プロセス)(Process) 商品提供フロー
- 物的証拠(Physical Evidence) サービスをする場所や空間・制服・設備など
なぜ3つ増えたかと言えば、モノを売るだけでなく、サービスのような無形のものを売る戦略も
立てる必要が出て来たからです。その為、7Pの事をサービス・マーケティングの7Pと言う事もあります。この7つを組合せて全体のバランス、整合性やシナジー効果を分析して戦略を練る事になります。
その7PのPeople、つまり人の所だけ考えてみても、確かにモノを売るだけでなく、サービスを売るようになると、人的サービスの質が商品のクオリティを決めるようになります。従業員だけでなく、つまり人の教育もマーケティング戦略になっているのです。つまり昭和的に考えてモノを売るのではなく、これからお客様と価値創造をして行きましょう、バリューを提供しましょうという場合、より「人」が重要になるという事です。なぜ商品開発と同じくらい人材育成に投資をしなければいけないかという理由のひとつがここにあるのです。
なるほどと膝を打った判明、これを15年も知らなかったのは、大問題だとおおいに反省しました。
このように、この領域が専門だと、その線から出ないよりも、一歩踏み出して隣の世界を覗きに行って見た方が、いろいろ面白い視点が見つかる事が多いと感じます。特にバウンダリー(境界)領域、宍道湖的な所には、すぐに使えそうな宝物が沢山あってお勧めです。