In 理念浸透

久しぶりに経営理念に関するエントリーです。立派な経営理念やコーポレートスローガンを作ってみても、何も効果がないというお話を良くお客様から伺います。だいたいにおいて、「そもそも文言が悪い」とか、次に良く出てくるのが、「トップがコミットしていないんです」とか、その次ぐらいが「部長連中がそもそも実践していないから駄目ですよね」という、これが、経営理念が浸透しない人事及び経営企画部あたりの言い訳のトップ3でしょうか?

もっと凄かった実際に直面したケースとしては、人事部をはじめ3つの部門が浸透施策を「うちじゃない」とそれぞれおっしゃっていたケースもありまして(私に理念浸透の仕事をさせたくない方便にも聞こえず、結局お手伝いをさせて頂きましたが)、経営理念の浸透というのは、成果がすぐ手に乗るような話でもないように思われるのか、どちらの会社も悩みの種の割には、担当部門を押し付け合ったり、後回しにしたりという事が多いようです。

チームのビジョン策定のワークショップ

今回実施させて頂いたのは、外資系企業様の全社員参加のチーム・ビジョン策定ワークショップでした。弊社にお任せ頂いたからには、当然経営理念と一線化された各チームのビジョンを策定する事が目標です。

捉えていた課題は、多様な経験をお持ちの多様な皆様をどのようにOne Teamとして輝いて頂くかです。私がお付き合いをさせて頂いているような大きな日本企業様の場合ですと、上から下への伝達系理念浸透が一般的です。うちの理念は、こうです、どうぞこのガイドラインで行動して下さいというスタイルです。時として、その文言が高圧的で社員の反感をかってしまっていたりもします。

今回のこのワークショップを実施させて頂いた企業では、新卒採用はなくすべてキャリア採用。社員の方は前職での様々なご経験を持って集まられています。その多様性こそ活かして結果を掴んで頂きたいと考えました。

その為、単に会社の目標に上から下にアライン(一線化)させて作るチームビジョンと行動指針ではなく、むしろベクトルの矢印は逆向き、社員が多様性を活かして、お互いに働きやすい環境を作り、共に組織の目標を達成しようというボトムアップにこだわったワークショップを設計しました。「どうしたら働き易い会社になるんだろう」、その為に私たちのチームは何をすべきなんだろうという事をチーム毎で徹底的に考えて頂きました。

勿論、組織論的にも、矢印は逆向きが一般的ですが、今回、こちらの会社の課題に合わせて矢印を下から上にしたのが、最大のポイントであり、ご参加の皆様の気持ちの面でも、こちらの会社の多様性を活かすという課題に対しても、正しい選択であったと考えます。ワークショップ構成上も、チームメンバーと、最初に行った演習は、それぞれのパーソナルビジョンの共有でした。単にチームビジョンという成果物を作るだけでなく、チームメンバーが「お互いを知る」良い機会となったようでした。

チームのビジョン策定は、レベル感が重要

フルカスタマイズのワークショップであり 、しかもチームビジョン策定のファシリテーターとして6チームのレベル感を出来るだけ揃える必要がある為、終始各チームを回る必要があり、わたくしにとって緊張の連続のワークショップでしたが、最初は激しく躓いていたチームが最後に凄いアウトプットを出したり、言葉は未熟かもしれないけれど、自分たちの言葉で懸命に考えて下さったりしているのを拝見して、感動してしまいました。私自身の研究テーマである経営理念の浸透ですし、準備は大変でしたが、やりがいが、もの凄い仕事でした。

アンケートの結果とコメント

アンケート結果は、以下のとおりです。

  • 満足度 8.09
  • 完成したチームビジョンの満足度 8.28
  • 完成したチームバリューの満足度 7.47
  • 会社への期待度 8.06
  • 講師評価 8.25
  • Team Visionをディスカッションすることで、個々の考え方等確認もでき、また、一つにまとめることの大切さを改めて確認することができました。
  • 会社にて時間をとってディスカッションした内容と今回場所を変え改めて討論すると結果としてよりより具体的な目標ができた。
  • これまでチームの意見を発出する機会が少なかったのかと反省させられました。毎週のチーム会議でround the tableを続けていますが、もう少し意見を表現しやすくしたいと思いました。
  • 部内でのワークショップは初めてで、コミュニケーションを取ることの重要性を改めて感じた。
  • Vision、Valuesは人それぞれ捉え方があり、我社は既に多様性があり違った意見を尊重し、みなで取り込んでいける文化が少しできつつあると思った。
  • チームそれぞれの特徴がよく出るなと思いました。会社に対する想い、仕事に対する想いの方向は皆同じだとも感じました。本当に実践してより良い会社、チームになることを望みます。
  • チームで事前にある程度準備していましたが、議論が白熱して良い機会になったと思います。もう少し練り直したいと思います。
  • “自分の”を考えるのはやりやすかったが、“チームの”を考える難しさを痛感しました。ただ、より具体的になると自分は何をすべきか、何ができるか等が見えるようになりました。
  • チームとしてのゴールや過程がよりクリアになりました。
  • チームメンバー個々に考えたことを持ち寄り全員で議論することで成果が得られたと感じた。
  • 3時間があっという間に終わってしまいました。他のメンバーとのexchange timeがあったので、入社後間もない自分にとって有意義でした。
  • Alignment with global vision and personal vision was very important for smooth operation of team.
  • It was my first time at this kind of event in this company and gain a lot of information about company vision and had great understanding of many colleagues.
  • Conduct was done in a very amicable environment and Facilitator was conducting it efficiently.(お褒め頂きました)

反省点は時間の設定です

反省点は、時間の設定です。すでに個人のビジョンやバリューを創るワークショップを実施させて頂いた上での、チームビジョン策定でしたので、あまりご負担になるような時間ではと3時間としましたが、チームビジョンは、すべてのチームが完成しましたが、そこから更に創り上げるバリュー(チーム行動指針)は、一部のチームで宿題となりました。アンケートでもチームバリューの満足度が、7.47と低く出ています。

アンケートコメントを拝見させて頂くと、みなさんがこのワークショップを楽しんでおられ、あと1時間プラスの4時間にしても良かったと思いました。事前課題を出させて頂いていましたが、お忙しい中取り組まれないで参加された方もいらして、このあたりは、本当にその場の雰囲気も大切ですので、長ければ良いというものでもなく、難しい所です。3時間、または4時間のワークショップに外部会場では難しいかもしれませんが、未完成のチームだけ続けられる追加の時間(+1時間等)をはじめから用意させて頂くのも一案かと思いました。また1チームが英語対応でしたので、私の貧しい英語で演習の説明をさせて頂くのは、冷や汗ものでした。これはおおいに反省しなければいけません。

チーム・ビジョン策定研修から考える経営理念の定着

経営理念の浸透は、本当に手間と時間がかかります。しかし、その浸透施策を通じて、組織課題を解決して行く事ができます。特に共感をキーワードに浸透を進めるとモチベーションに大きなインパクトを与える事ができます。更に今回のケースの様に隣のチーム、隣のメンバーをもっと良く知って組織やチームの風通しを良くする、経営理念を具体的なビジョン&ゴールに近い形でチームまで落とし込む等、よりビジネスの成果に結びつきやすい形での理念の浸透は、さらに効果的です。

皆さまの会社では、経営理念浸透でどのような課題を解決されたいのでしょうか?皆様のチームでは、大きな組織のビジョンに一線化された、メンバーがわくわくできるようなチームビジョンをお持ちですか?