In 理念浸透

経営理念策定や刷新を通じて、組織の内側からの改革のお手伝いをしています。経営理念の策定や刷新を通じて、働き方を変える、働く意識を変える、組織の文化を社風を変えるというような試みです。今日は、日本の伝統的な企業で気が付いた「まじめな社風」について気づいた事を共有させて頂きます。

安定した、または安定していると社員から長年思われて来た特に大手日本企業の組織改革のお手伝いをさせて頂くと、厳しい環境変化に直面しているにも係わらず、社員は健全な危機意識を持つ事もなく、待ちの姿勢でいる事が多いです。創業○○年と自慢できるような会社や、組織の中でもこれまで特に個々人が能動的に動かずとも長く結果を出し続けている花形と言われて来た部門も要注意です。

私は、研修やワークショップを設計する前にヒアリングを重ねて毎回その企業に合わせたものを提供するのですが、このような企業の経営者や人事責任者の方からヒアリングの際に共通して良く出てくる言葉が「うちの会社の特徴はまじめです」という事です。この特徴がまじめ、社風がまじめというのは、変化の激しい昨今の経営環境においては、実はあまり褒められた事ではないと考えています。

オーナーシップを持ち変化に対応すること

私ごときが申し上げるまでもなく、世のビジネス環境は多様性を尊び、個々人がオーナーシップを持って、行動する必要に迫られいます。変化への対応が急務なのです。このオーナーシップというのは、自分がオーナーであるかのように行動すること、つまり主体的に行動する事です。変化の激しい環境では、このままでいい、このままで大丈夫と行動を起こさなかったり、指示を待っていたりしては商機を逃がしてしまうからです。

ところが、日本の伝統的な企業では、上からの指示をきれいに水が上から下へ流れるかのごとくカスケードダウンする方式でこれまで成果を上げてきました。「言われた事はちゃんとやります、次は何をしたら良いでしょうか?」的に組織の方針にしがたい、上司の指示に従い、まじめにやる人が評価されたきたのです。まじめな社風の中では、社員は指示を待ちます、評価のポイントは失敗をしないことですから、勿論新しい事にはチャレンジしたいと思いません。そして、すべてが自分事ではありませんので、環境変化にも鈍感になりがちです。

このような組織では「変化が激しい環境に変わっています、至急オーナーシップを発揮して下さい!」「自ら考え、自ら行動して下さい」的に経営陣が言い始めても、当たり前ですがポカーンとされてしまう事が多いのです。念の為ですが、それは社員のせいではありません。これまでの評価の基準がそのような社員を作っています。

私は日系企業に20年以上、外資系に12年務めましたが、外資系では、「オーナーシップ」を持って仕事をしないと評価されない所が殆どです。ちょっと微妙な書き方なのは、直属上司の持つパワーも責任範囲が広い分半端ないので、なんでも好きなようにできるかと言えば、そうではない事もある為です。外資の場合、ひとりひとりはジョブディスクリプションと言ってやるべき仕事の範囲が明確に示されて、その中で比較的自由に考え行動できるのです。決済プロセスも日系よりシンプルで、結果責任を果たせば個々人に任される範囲も大きいと感じます。日系企業では、そうでない代わりに、結果がでなくてもハンコを押した上司のせいであり、自分のせいではないと言い張れる事が多いです。

経営理念ワークショップでの事例

たとえば、これまでかかわらせて頂いたある企業でも、そのような課題がありました。急激な環境変化に直面していて健全な危機意識を持って頂かないとご本人の為にもならないケースです。

私は、講師としてニコニコ元気に飛び回ってワークショップのテンションを上げて行きますが、言っている事は結構厳しめの事をどんどんお伝えしています。変化への対応など、外部からみたままを忖度なくお伝えした方が結果的にプラスになると思うからです。このケースでは、ご参加のみなさん素晴らしい方ばかりでしたが、もう少しオーナーシップを発揮して頂けたらという発言も見られました。

このような企業でアンケートに書かれるのは、自分から動くのではなく、「もっとCMを売って会社の知名度をあげて頂きたい」であるとか「新製品が必要です」などと言うものです。この「頂きたい」などという言い回しがでてきたら要注意なのです。新製品の為に、自分たちが考えよう、動こうではなく、新製品を出さない会社のせいなのです。このような組織に長年働き、物事を決める為には稟議書というものを作り、スタンプラリーのようにハンコを押して貰って決める、だから自分の責任ではありませんという社風を変えるのは、本当に難しいと感じます。

また別の企業では、経営理念の草案が激しくお役所的になっているという指摘をしました。なぜそのように小さく纏まってしまおうとするのか、厳重注意させて頂きました。まじめが美徳のような社風になってしまっているのでしょう。現在取組んでいる企業でも、組織サーベイの結果が1点も5点も殆どなく全部真ん中の「ふつう」によっている点を「こんな組織サーベイの平均が3.5の会社、だれも何も言わない会社、働いていて面白いですか?」ぐらいの事を言っています。

ワークショップで、失礼かも知れないというギリギリの所を攻めると、残念ながら一部の方には受け入れて頂けず講師評価の平均が、6点台から8点台まで乱高下する場合もあります。アンケートに忖度しない講師の発言が凄いというコメントを書いて頂く事も多々あります。こういうコメントは、まさに狙い通り、勲章を頂いたと思い喜ぶ事にしています。忖度していたら、仕事にならないので仕方がありません。

現在進行中のプロジェクトでも、同じような状態でスタートしましたが、最初こそ皆さん驚かれたようですが、もともと社内でも優秀なメンバーを選抜して頂いている事もあり回数を重ねて団結力と会社を自分たちが変えてやろうという気持ちが、最高潮に盛り上って来ました。しかし連続したプロジェクトに入らせて頂いて挽回のチャンスがある事から、私も厳しい事も言えるのです。これが、単発の研修や、まして講演のような短いものでは流石の私も控えめになるかも知れません。

健全な危機意識は研修内でどのように醸成されるのか?

では、どのようにワークショップや研修内で、そのような危機感を伝えるのですか?思われるかも知れません。答えは意外かも知れませんが、「みたまま、そのまま」をお伝えするだけです。ただし、そのような偉そうな事を言うからには、その企業と業界、関連法案などを論文がかけるくらい徹底的に勉強して、どのような切り返しにも妥当性のあるコメントができるようにして臨んでいます。私に依頼されなくても結構ですが、職人的業務没頭型コンサルタントがお勧めです。

そして、できれば厳しい事も明るくお伝えするコンサルタントです。因みに下の写真のコンテンツは、あなたのやる気はなぜでない?というコンテンツですが、「なんでやる気でないんですか?」と走り回って、まさにパワー炸裂しています。

また、健全な危機意識醸成のワークショップで、もうひとつだけポイントを付け加えるとすれば、行動変容にいかに繋げるか?という点です。危機感を煽って大いに盛り上がった議論しても、行動に繋がらないのでは意味がありませんので、ワークショップ設計の留意点として、議論を行動に繋げるような流れにするように心がけています。その点、経営理念策定内でこのような議論をすると、バリュー(行動指針)の作成の際に、望むべき行動や働き方に言及できるので、行動に繋がり易いと感じています。

まじめな社風を攻める社風に

このような攻めのワークショップを昨年からすでに20回以上やってみて感じるのは、外部の人間に言わせる効果です。

最近は営業研修などにも、危機感の醸成という演習付きのコンテンツを組み込んで、経営層にも、ご参加の皆様にも喜んで頂いています。自分の足元の氷が溶けかかっているのに、気づかないでいるのは、不幸ですから、ご参加の皆様にも喜んで頂けるのは、私にとっても非常な喜びです。

1度や2度の社員集会で危機感が植え付けられないのは、当たり前です。アプローチを変えてみる事で結果を変えてみませんか?そして、まじめな社風は、良い社風とは限りません。もし御社の社風にも「まじめ」が存在するならば、「まじめな社風」を「攻める社風」に変える時期が来ていませんか?